
化粧品売り場に入ると様々なPOPに目を引かれます。「深いシワにこれ1本」「美白の味方」「敏感肌の方にも安心」「一晩でお肌がぷるぷるになりました!」などなど、魅力的な効果が書かれたPOPでいっぱいです。
しかし、化粧品の広告は、ただ製品のすばらしさをアピールすればよいというわけではありません。薬機法、景品表示法などを理解し、法律の範囲内で適切な表現をする必要があります。このページをご覧いただいている皆様は、法律を守りながら、いかに商品の良いところを効果的にアピールできるか、日々苦心されているのではないでしょうか?
前回の「化粧品広告と薬機法 ~その広告表現、本当に大丈夫?~」のコラムに続き、今回は化粧品売り場のPOPについて、具体的に解説していきます。
1.化粧品の効能効果
化粧品は一般化粧品の他に医薬部外品である薬用化粧品があります。

前回のコラムで説明した通り、一般化粧品に認められた効能効果は56項目あり、その範囲内であれば、事実に沿って広告することができます。また、薬用化粧品には、効能効果が認められた有効成分が配合されていますので、一般化粧品で表現可能な56項目の効能効果だけでなく、製品として承認された効能効果の範囲内での広告が可能です。
一般化粧品、薬用化粧品とも、認められた効能効果は、時代に合わせて追加・変更される可能性があります。また、メイクアップによる効果は、事実である限り認められています。
2.気になる表現
ではPOP作成時の気になる表現について見ていきましょう。

(1)シワが消える?
一般化粧品でシワに対する広告は出来るでしょうか? 56項目の中には「乾燥による小ジワを目立たなくする」(※)しか見当たりません。そのため、一般化粧品では「乾燥による小ジワを目立たなくする」ことまでしか広告できません。(※日本香粧学会の定めた試験や同等の試験を実施し基準を満たした場合に限ります。)
また、予防的表現も認められていません。
では、薬用化粧品ではどうでしょう。「できてしまったシワに!」との広告もある通り、「シワの改善」が認められた有効成分が配合された薬用化粧品は、シワへの効果を広告することができるのです。ただし、今のところ「深いシワを改善」する効果を認められたものはありません。また、承認された効果が薬用化粧品であっても効果を保証する表現は禁止されています。
次にメイクアップ用品の場合は、ファンデーションやフェイスパウダーなどでシワを埋めたり、光の効果で目立たなくするなどの一時的で、視覚的なメイクアップ効果に限り広告することができます。

(2)今あるシミをなかったことに?
シミはどうでしょう?一般化粧品の場合は56項目の中には「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」があります。これは「日やけによる」とあるように、日やけを防ぐ効果で、まだできていないシミ、ソバカスを防ぐという意味です。日焼け止め効果のある一般化粧品にしか使えません。
薬用化粧品の場合は「メラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを防ぐ」効果が認められています。こちらもまだ表面化していないシミ、ソバカスに対しての効果であり、肌表面にできてしまったシミ、ソバカスを消すものではありません。
メイクアップ化粧品の場合は、ファンデーションなどで、今あるシミを消して(隠して)しまえます。ただしメイクアップ効果であることが明確である必要があります。
「美白」をキャッチフレーズのように使用することがありますが、肌を白くする効果は一般化粧品、薬用化粧品共に認められていません。「美白」を根拠なく使用することはできません。 薬用化粧品の場合「メラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを防ぐ」、メイクアップ用品の場合「メイクで白く見せる」など、美白の説明となる注釈が必要です。


(3)低刺激だから安心?
刺激の少ない、お肌にやさしい化粧品をアピールする場合にも注意が必要です。化粧品は安全性を保証する表現が禁止されていますので、過度に安全をアピールすることはできません。「安心・安全」は禁止された表現です。

(4)このクリームを使ったらお肌がぷるぷるになりました?
実際に製品を使用された方の体験談は説得力があります。お客様からいただいた喜びの声を売場に掲示する場合は、何に注意すればよいでしょうか。例えば「お肌のうるおいを実感しました!(30代女性)」と掲示するのはどうでしょう? 56項目の内容なので問題ないと思いませんか?ですが、体験談はその説得力がゆえ「効能効果の保証的」な表現とされるため56項目の内容であったとしてもNGです。
また、ステルスマーケティングなど景品表示法違反の可能性もありますので、POPに表示する際は慎重に行う必要があります。
ただし、体験談は効能効果や安全性についてはNGですが、それ以外の使用感や香りについてはOKです。


(5)使用前後の写真は効果が見える!
使用前、使用後の写真は目で見て効果がわかるので、訴求力があり効果的です。
ですが、認められた以上の効能効果を想起させるもの、安全性の保証表現となるもの、「肌荒れを防ぐ」など一般化粧品に認められた「防ぐ」の効能効果は、使用前・後の写真等で表現することはできません。
また、使用できるからと言っても作為のある写真はNGです。景品表示法に違反します。ただし、染毛剤などのカラー見本や、認められた効能効果の範囲内での事実に沿った表現は、過度な強調表現にならない限り認められています。

(6)特定の成分名が目立つように書いてあるけど、 よく効く成分なのかな?
化粧品に配合された成分のうち一部のみを表示することを特記表示といいます。 目立たせることで、有効成分であると誤解されるおそれがあるため、特記した成分には化粧品の効能効果の範囲内での配合目的を併記する必要があります。
製品に特記成分の配合目的が表示されている場合でもPOPの配合目的を省略することは望ましくありません。


(7)売上げNo.1!
店舗で1番売れた商品をお勧めしたい!売上ランキングのコーナーを作りたい、そんな時、「No.1!」を記載する前に、何がNo.1なのか、ちょっと確認してみてください。
化粧品では、効能効果、安全性について「No.1」などの最大級表現を使用することは、効能効果、安全性について誤認を与える恐れがあるため、禁止されています。
ただし、「売り上げNo.1」など、効能効果、安全性に該当しないものは、薬機法の対象とはしないとされています。
No.1表現は景品表示法の不当表示として注目されています。表示をする場合は、客観的調査に基づく結果を適切に引用し、正確な情報を心掛けましょう。


(8)国内最高レベルの日焼け止め?
紫外線の気になる季節、日焼け止め効果が高い商品を選びたくなりませんか? 最高レベルならしっかり日焼けを防いでくれそうです。
ここで、先ほどの例が頭をよぎったのではないでしょうか?化粧品は最大級の表現は禁止されています。国内最高レベルはどうでしょう?最大級的な表現ですよね。では、これはNG表現でしょうか?
日焼け止めに関しては「SPF50+ PA++++」が国内で表示し得る最高の数値です。 これが明確であるため、その数値を満たした製品に「国内最高レベル」等と表示することはNGとはされていません。
ただし、「絶対焼けない」などの過度な強調表現や、「どこよりも強い効果」など他社よりも優れていることをアピールすることは保証的、他社誹謗に繋がるため認められていません。

(9)アンチエイジング
年齢を重ねると気になるシワ、たるみ、お肌のハリやくすみ・・・化粧品は年齢にあらがう効果は認められていません。
年齢肌に対する表現は「エイジングケア」がありますが、「エイジングケア」とは年齢に応じた化粧品によるお手入れをあらわします。うるおいを与える、はりを与えるなど、あくまで化粧品の効能効果の範囲内であることが前提です。
「アンチエイジング」「シワ・たるみの防止」「若返り」など化粧品の効能効果の範囲を超えた表現は認められません。また、「エイジングケア」はお手入れについての表現ですので、特定の効能効果を暗示するような「エイジングケア成分」もNGです

3.話題の海外コスメには日本のコスメにない効果がいっぱい?
流行の韓国コスメなど、海外コスメのPOPを作成される際に知っておいていただきたいことがあります。それは法律の違いです。海外では許されている広告表現であっても、日本の法律ではNG表現となる場合もあります。本体に書いてあるから、効果が認めれているからと、翻訳してそのまま表示する前に、日本で使用できる表現か、もう一度確認してください。


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4.おわりに
最後に、化粧品には薬機法、景品表示法など係わる法律が多岐にわたります。そのため、POPを作成するためには知識と経験が重要です。特に薬機法の対象は「何人も」であるので、すべての人が対象となります。
店舗に掲げられたPOPに違反があると、法律違反による措置命令や、課徴金による損害、そして何より消費者の信頼を失う結果になりかねません。化粧品を扱うためには知らなかったではすまされない法律です。
当社では化粧品や雑貨品などのパッケージやPOP、専用什器等の広告表現の事前チェックをはじめ、店頭展開中の商品表示の問題点などを洗い出す店舗点検業務を実施しており、多くのメーカー様、小売店様よりご用命いただいております。
また、品質管理ご担当者様や店頭スタッフ様向けに、各種商品に関連する法律についての講習会のご依頼も承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。
こちらのコラムは 第四コンサルティング本部 商品グループ が担当いたしました。