
みなさんは商品やサービスを選ぶとき、何を参考にしていますか?商品のパッケージ、店のPOP、価格、景品、店員さんのセールストーク、SNSなど様々な情報の影響を多少なりとも受けていると思います。
本コラムでは、景品表示法についてこれから学習する人や、内容を整理したい人へ向け、基礎となる内容についてお話しします。
1.景品表示法とは?
「景品表示法」「景表法」などの呼び方で馴染みのある法律ですが、正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」となります。(以下、景品表示法とします。)
景品表示法の目的は「一般消費者の利益を保護すること」であり、過大な景品類の提供や不当表示などを規制している法律です。景品表示法の制定や目的には、制定された当時の経済・社会情勢が影響しています。
景品表示法が制定されたのは1962年。当時の日本は高度経済成長期の真っただ中であり、「作れば売れる」時代でした。
そのため、事業者は顧客を獲得するために競争が激しくなり、「ガムで1000万円が当たる」など過大な懸賞や景品での販促活動が激化していきました。
また、1960年には「ニセ牛缶事件」が起こります。「牛肉大和煮」として販売していた缶詰ですが、実際には牛肉ではなく、鯨肉や馬肉を原料として使用していたことが発覚したのです。
今では信じられないような事件ですが、当時は食品衛生に関する法律はあっても、品質や広告表現を規制する法律がなかったため、これらを取り締まることはできませんでした。また、他の牛肉大和煮缶もほとんどがニセモノであることが調査で分かり、大きな社会問題となったのです。
この社会問題をきっかけに景品表示法が制定され、その時代の情勢や課題に応じた改正が行われ、現在の景品表示法が存在します。
では、景品表示法の内容を見ていきましょう。

景品表示法の目的は「一般消費者の利益を保護すること」であり、この目的を実現するためには、商品やサービスに関する景品類・表示によって、「不当に顧客を誘引することを防止する」必要があります。
この目標を達成するために、景品表示法では大きく分けて3つのことを規定しています。
1つ目は、「不当な顧客誘引の禁止(第4条・第5条)」です。
こちらについては、「2. 「景品類」「表示」に関する規制について」で詳しく説明します。
2つ目は、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置(第22条)」です。
事業者が不当な景品類・表示によって顧客を誘引することがないよう、景品類の提供や表示に関する事項を適正に管理するために講じるべき指針を定めています。
3つ目は、「協定又は規約(公正競争規約)(第36条)」です。
消費者庁長官及び公正取引委員会の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示・景品類に関する事項について業界ルールを設定できることを定めています。
この業界ルールは「公正競争規約」と呼ばれ、エスカレートしがちな不当表示や過大な景品類の提供を未然に防止するという目的があります。
商品やサービスを提供する際、お客様を呼び込むために景品を提供したり、広告表示を行ったりする場合は、これらの項目について理解し、ルールを守る必要があります。
2.「景品類」「表示」に関する規制について
(1)規制の対象者は?
景品表示法では、一般消費者の利益を保護する目的のもと、「不当な顧客誘引の禁止」(不当な景品類の制限・禁止、不当な表示の禁止)を定めています。
これらの規制に関する対象者は「事業者」となります。景品表示法では、事業者は「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」と定義されており、営利を目的としない協同組合、共済組合等であっても、事業者に当たると解釈されています。
例えば、非営利団体が開催したイベントで、自らの商品・サービスを提供した場合は事業者に該当することとなり、景品表示法が適用されることになります。
また、外国の事業者であっても、日本国内の一般消費者を対象に商品・サービスを提供している場合は、景品表示法の適用対象となります。日本法人の有無、事業者の国籍、所在地などは関係ないため、注意が必要です。
(2)景品類の制限・禁止
景品表示法では、「景品類」とは「顧客を誘引する手段」として「取引に付随して提供する」物品や金銭など「経済上の利益」を指すものとしています。
経済上の利益についても告示で具体的に定められており、品物や商品券、映画観賞券、情報の提供などが該当します。なお、値引きやアフターサービス、付属品等は景品類に該当しません。
景品類には主に「懸賞」と「総付景品」があり、以下のように分類されています。景品類の分類や取引金額に応じて上限額が異なるため、景品を提供する際は注意が必要です。
①一般懸賞
くじの偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること
(例)じゃんけん、抽選券、三角くじ、パズル、クイズ等

②共同懸賞
一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供すること
(例)商店街での抽選会、町内の夏祭り等

③総付景品
懸賞によらず、商品・サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供すること
※創業祭などで提供される記念品などは該当しない

また、懸賞の一種である、いわゆる「カード合わせ」の方法は全面的に禁止されています。オンラインゲームでのコンプガチャや、ランダムカード商品の特定のカードを集めた場合にもらえる限定カードなどが該当します。
(3)不当な表示
景品表示法において「表示」とは、「顧客を誘引するための手段」として「事業者が自己の商品・サービスの内容や取引等について行う広告その他の表示」と定義されています。
「広告その他表示」には、以下のようなものがあります。
表示の例

例えば、雑誌の記事に健康食品の瘦身効果について書かれていたとします。この雑誌記事は、この健康食品を自ら販売(供給)していない雑誌の出版社が書いた内容のため、景品表示法上の表示には該当しません。
ただし、この健康食品を販売する小売店が、この雑誌記事をそのままPOPとして活用する場合などは、景品表示法上の表示に該当し、規制対象となるため、注意が必要です。
「不当な表示」として、「事業者が自ら供給する商品・サービスの表示」に該当するもののうち、以下の内容が禁止されています。

品質や規格について表示する場合は、合理的根拠に基づいて表示する必要があります。合理的根拠がない場合や該当しないとみなされた場合、不実証広告規制により、優良誤認と判断される場合があります。
価格の表示について、販売価格の他に高い価格を併記して表示することを「二重価格表示」といいます。「二重価格表示」を行う場合、実在しない希望小売価格や、「最近相当期間」にわたって販売されていた価格に該当しない価格を表示しないよう、注意が必要です。
また、景品表示法では、規制対象は事業者であると説明しましたが、景品表示法上の「表示」についての規制対象は、「表示内容の決定に関与した事業者」となります。過失の有無は関係ありません。
商品の仕入先からもらった情報をそのまま使用し、販売者が表示を決定した場合も対象となります。自ら表示を行う場合は、提供された情報を鵜呑みにせず、事実や合理的根拠を確認した上で表示することが必要となります。
3.違反をしたらどうなるのか?~違反のリスクは高い~
景品表示法に違反してしまった場合、どのような処分を受けるのでしょうか?
景品表示法のなかで定められている処分等は以下のものがあります。

景品表示法への違反行為が疑われた場合、消費者庁、各都道府県などが調査を行い、違反と認められた場合は「措置命令」が行われます。違反と認められないものの違反のおそれがある場合などには「指導」が行われます。
措置命令では、対象となる表示や景品類の提供などの差止めのほか、一般消費者への周知徹底、再発防止策を講じた上での従業員等への周知徹底、今後同様の違反行為を行わないこと等を命じられます。措置命令に従わない場合は、違反行為者に2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、さらにその事業者には3億円以下の罰金が科されます。
さらに、優良・有利誤認に該当するもので措置命令を受けた場合は、「課徴金の納付」が命じられ、違反行為に係る商品・サービスの売上額の3%分が課徴金額となります。
事業者が違反事実を自主的に消費者庁長官へ報告した場合や、所定の手続きに沿って消費者へ返金措置を行った場合は、課徴金の減額が認められます。なお、「相当の注意を怠った者でない」と認められる場合や、課徴金額が 150万円未満である場合は課徴金の納付は命じられません。
また、2023年法改正では、いわゆる「直罰規定」が新設されました。
優良誤認・有利誤認表示を「故意に」行った事業者に対し、措置命令を待たずに100万円以下の罰金に処することが可能になったのです。これにより、不当な表示を故意に行う悪質業者を抑止することが期待されています。
同じく、2023年法改正によって「確約手続」が導入されました。
優良・有利誤認の疑いのある表示を行った事業者に内閣総理大臣の権限を委任された消費者庁より通知を行い、それに応じて事業者が自主的に是正措置計画を申請し、消費者庁の認定を受けた場合、措置命令・課徴金納付命令が免除される制度です。
従来の行政処分と比べ、消費者への被害回復、契約・取引の変更が早期にかつ効率的に行われることが期待されています。なお、事業者は措置命令を受けた際と同程度の計画が求められます。
景品表示法に違反した事業者は社会的信用を大きく失うことになります。信用を取り戻すためには多くの時間と労力が必要となりますし、違反前と同じように信用や経営状況が回復することは難しいかもしれません。企業のコンプライアンス意識が強く求められる昨今、景品表示法を遵守することは危機管理上とても重要なことになります。
4.まとめ
景品表示法は、食品や日用品に関わらず、全ての商品やサービスの取引に関わりのある法律です。特に、消費者向けのパッケージやカタログなどに自ら表示内容を決定して表示を行う場合は、不当表示でないか事前に確認することが重要となります。
当社では食品・生活雑貨品のコンサルティングサービスや表示点検、検査を実施しています。今回紹介した景品表示法はもちろん、食品であれば食品表示法や健康増進法、日用品であれば薬機法や家庭用品品質表示法などに基づいた表示内容の点検を行っております。
また、品質管理ご担当者様や店頭スタッフ様向けに、商品・食品に関連する法律の講習会のご依頼も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
生活雑貨品の品質管理|BMLフード・サイエンス-検査・品質管理の総合コンサルティング
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