
食物アレルギーの表示制度は、食品表示法(平成 25 年法律第 70 号)に基づく食品表示基準(平成 27 年内閣府令第 10 号)に規定されています。
表示義務の対象範囲は、容器包装された加工食品および添加物に限られています。
すなわち、飲食店で提供する食品には食物アレルギーの表示義務はありません。
しかし、近年では飲食店のメニューにアレルギー表示をすることが推奨されています。
では、飲食店に従事される方はどのようなことに気をつけながら、アレルギー対応をする必要があるのか解説します。
1.飲食店とアレルギー表示の基本
上述にあるとおり、飲食店で提供する食品にはアレルギー表示の義務はありません。
これは、飲食店の厨房内では、様々な食材を取扱うことから厳密にアレルギー管理や検査を行うことが難しいこと、また、直接お客様に食品を提供することからアレルギーについて回答が可能であることを考慮しています。
このようにアレルギー表示の義務はありませんが、アレルギー表示を行うことには以下のようなメリットがあります。 万が一アレルギーをお持ちのお客様が来店した際、メニューにアレルギー表示が記載されていればお客様自身で確認して注文することが可能となります。またアレルギーに関する問合せを受けた際にも、店舗内でどのように対応するかが明確となります。
では、どのようなことに注意しながらアレルギー表示や対応をすれば良いのか基礎知識等を交えてお話します。
(1)アレルギー症状と原因食品の基礎知識
食物アレルギーとは、身体を守る「免疫機能」が、無害なはずの食べ物に対して過敏に反応し、不利益な症状が引き起こされる現象のことを言います。
アレルギー症状は重篤度により様々ですが、湿疹などの皮膚症状をはじめ、呼吸器症状、ショック症状などが起こり最悪の場合死に至るケースが起こる可能性もあります。
アレルギー表示の対象となる食品は、症例数や重篤度から表示義務のある「特定原材料」と、表示を推奨する「特定原材料に準ずるもの」の2種類に分類されています。
2025年10月現在、
特定原材料には、8品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)が対象となっています。
また、特定原材料等に準ずるものは、20品目(アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マ カダミアナッツ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン)が対象となっています。
(2)食品表示の法改正動向
特定原材料・特定原材料に準ずるものは、健康被害の観点から、定期的に全国のアレルギーを専門とする医師を対象として実施している全国実態調査における症例数や重篤度を踏まえ決定されます。
直近では、2023年3月にくるみが「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に格上げとなり、移行措置期間を経て2025年4月1日に完全施行となりました。
2024年3月には、まつたけが「特定原材料に準ずるもの」から削除され、マカダミアナッツが追加となりました。
また、カシューナッツの特定原材料への変更・ピスタチオの特定原材料に準ずるものへの追加が検討中です。
このように、アレルギー表示に関しては目まぐるしくルールの変更がされていますので、適切に対応することが重要なポイントとなります。

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本コラムでは、アレルギー表示の対象品目、カシューナッツが特定原材料へ移行する方針、ピスタチオが特定原材料に準ずるものに追加する方針が示された背景や今後の動向、食品事業者に求められる対応について、要点をわかりやすく解説します。
2.飲食店が取り組むべきアレルギー表示の実務
実際に、飲食店が取り組むべきアレルギー表示実務についてご説明します。
メニューやPOPにアレルギー表示を行う際には、特定原材料8品目もしくは、特定原材料に準ずるものを含む28品目を対象としているのかを明確化し、以下の記載例のように表記することが望まれます。
記載例①)特定原材料:乳・小麦
記載例②)特定原材料等:乳・小麦・大豆・りんご
はじめに実施すべきこととして、各メニューに使用している食材・調味料に含まれているアレルギー物質の把握が必要です。
食材に記載されている一括表示・製品規格書から情報を入手することが可能です。
ただし、特定原材料に準ずるものは表示推奨のため、一括表示などに記載されていない場合もあるので注意が必要です。
3.アレルギー事故を防ぐための店舗運営対策
店舗では、アレルギー事故を防ぐために適切に対応することが重要です。
実施すべきポイントとして、従業員教育・アレルギー表示の適切な更新・コンタミネーション対策があります。
万が一誤った対応をすると、お客様の命に関わる可能性があります。
様々なお客様から多種多様な質問を受けますが、どのスタッフが対応しても適切に回答し、調理対応することが求められます。
はじめに、スタッフへの教育のポイントからお話しします。
(1)スタッフへの教育と意識づけ
従業員はアレルギーに関する適切な知識と対応方法を理解し、教育することが重要です。
教育すべき点として、「アレルギーとは」「お客様からアレルギーについて問い合わせがあった場合にはどのように対応するか」「アレルゲン除去した食材の適切な提供方法」が挙げられます。
まず、アレルギーはどのような物質により、どのような症状を引き起こしてしまうものであるか教育をしましょう。
次に、アレルギーについて問い合わせがあった場合に店舗内でどのように対応するべきか教育しましょう。
統一の受答え内容を決めておくとよいでしょう。
アルバイトのスタッフが対応した場合は社員に引き継ぐ、社員の方も正しい回答が不明な場合はわからない旨を回答するなどが挙げられます。また、完全には除去できない可能性がある旨もお伝えするとよりよいでしょう。
最後に、お客様から提供の許可を得た後には、アレルゲン除去した提供品を適切に該当のお客様に提供することが必要です。万が一、アレルギー事故が発生した場合の対応フローを明確化し共有しておきましょう。
(2)メニューへの表示方法と工夫
食材に含まれるアレルギー物質は、納品物の変更や、同一商品でも商品の規格が変更となった場合には変更になる可能性があるため、十分に注意しましょう。
また、詳しいことはスタッフへの問い合わせの依頼や、完全に除去できない旨を記載すると良いでしょう。
店舗で使用している食材の変更があった場合には、アレルギー表示の更新が必要になるケースもあります。定期的なアレルギー情報の確認・更新が求められます。

(3)コンタミネーション対策の徹底
お客様から提供の承諾を得たのちは、厨房内で適切に情報共有を行い調理することが必要です。
どこにアレルゲンが付着しているかわからないため、作業台や調理器具は一度洗浄して使用します。
また、手洗いの実施、手袋着用をすることで直前の工程で付着している可能性のあるアレルゲンを除去します。提供前には、アレルゲン除去の提供品であることをスタッフ間で適切に連携しましょう。
4.万が一の対応
では、万が一提供食材でアレルギー事故を発生させてしまった場合、どのように対応すると良いのでしょうか。
食物アレルギーによる症状は人それぞれ異なります。 発疹などの皮膚症状や呼吸困難などの呼吸症状、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を引き起こすケースもあります。
すぐに適切な処置を行わなければ、死に至る可能性があります。 アレルギー事故が発生したときには、救急車を呼ぶことを厭わないようにしてください。
そのため、緊急時対応フローを作成し、何か事故が発生した場合の対応方法・連絡先をスタッフ間で共有しておきましょう。
緊急時、円滑な対応が出来るよう、作成した緊急時対応フローを用いて訓練を実施すると良いでしょう。
お客様へは真摯に対応しましょう。
5.まとめ|飲食店のアレルギー表示で守る安全と信頼
飲食店のメニューへのアレルギー表示は義務化されていませんが、アレルギーを持つ消費者の増加に伴い消費者庁では表示を推奨しています。
より多くのお客様に食事を楽しんでもらうことこそが飲食店事業者の望むことだと思います。
そのためには、適切にアレルギー情報の伝達を行い、アレルギー対応をすることが求められます。

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