
飲食店で働く上で、注意すべき食中毒菌のひとつが黄色ブドウ球菌です。手指の傷や調理器具から食品を汚染し、毎年多くの食中毒事故を引き起こしています。お客さまの健康と店舗の信頼を守るには、正しい予防知識をもち対策を行うことが必要です。
このコラムでは、黄色ブドウ球菌の特徴と、明日から実践できる具体的な対策をご紹介します。
1.黄色ブドウ球菌とは?基本情報とリスク
黄色ブドウ球菌は顕微鏡で見てみると、球体が連なった形状をしておりぶどうの房のように見えるため「ブドウ球菌」と呼ばれています。
人や動物の傷口、手、鼻、のど、耳など自然界に広く存在しており、健康な人でものどや鼻に持っている常在菌です。健康な時にはほとんど害はないものの、免疫力が弱っている時や傷口があるときは黄色ブドウ球菌の感染症にかかりやすくなります。黄色ブドウ球菌に感染すると毛嚢炎、とびひなどの皮膚疾患が起きます。さらに血液に乗って全身に回ると、骨髄炎、化膿性乳房炎、肺炎を発症し重篤な症状を引き起こすこともあります。
特に身近で注意が必要なのは黄色ブドウ球菌による食中毒です。毎年多くの施設や飲食店で発生しています。黄色ブドウ球菌による食中毒は菌そのものを食べて発症するのではなく、黄色ブドウ球菌がつくりだす毒素を摂取することで発生します。
ー黄色ブドウ球菌による食中毒ー
黄色ブドウ球菌は食材に付着して増殖し、エンテロトキシンという毒素をつくりだします。このエンテロトキシンという毒素を摂取することで食中毒を発症します。
具体的に食中毒発生に必要な黄色ブドウ球菌の量は食品1グラム中に10万個以上と言われています。とても多い数の菌が必要だと感じるかもしれませんが、黄色ブドウ球菌は条件が揃えば約30分に1回のスピードで倍の数に増え、瞬く間に増殖していきます。単純計算をすると、10個の黄色ブドウ球菌が10万個に増えるためには3時間程度しかからないということです。
黄色ブドウ球菌は30℃~37℃が最も増殖しやすく、夏期の気温は黄色ブドウ球菌の増殖に適しており、7,8月に黄色ブドウ球菌による食中毒が多くなる傾向にあります。
2.黄色ブドウ球菌による食中毒の症状
黄色ブドウ球菌による食中毒の主な症状に次のようなものがあります。
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
- 吐き気など
特に激しい嘔吐が特徴的です。発熱はあまりないですが軽度の発熱を伴う場合もあります。
発症までの時間は比較的短く、原因食品を食べて30分から6時間程度と短時間で症状が出ます。症状の持続時間も短く、1日から2日で回復することが多いです。
3.食中毒を引き起こす主な原因食品と環境
黄色ブドウ球菌は手を介して食べ物に付着することが多く、おにぎりやお弁当、寿司、和菓子、ケーキなど手作業で調理された食品で特に起こりやすいです。
しかし、加熱をしていれば安全ということでもありません。黄色ブドウ球菌自体は高温に弱く、加熱調理をすれば殺菌できますが、毒素であるエンテロトキシンは100℃で30分の加熱をしても失活しません。そのため最終工程で加熱をする食品でも、加熱前に黄色ブドウ球菌が食品中で増殖していると食中毒を引き起こす可能性があります。
上述のとおり、30℃~37℃が黄色ブドウ球菌にとって繁殖しやすい温度であり、夏場の食品の常温放置は非常に危険です。 毒素は酸にも強く、胃液中の酸や消化酵素でも分解されないため通常の調理方法や体内で毒素を壊すことはできません。

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本コラムでは、食品の衛生管理にとって重要な黄色ブドウ球菌について、食中毒発生メカニズムおよび予防対策を中心に解説します。
4.飲食店での具体的な予防対策
黄色ブドウ球菌に限らず、食中毒対策では「つけない」「増やさない」「やっつける」が基本原則です。その中でも黄色ブドウ球菌の食中毒対策では「つけない」「増やさない」ための対策が非常に重要です。
(1)黄色ブドウ球菌を「つけない」
手洗いの徹底
始業時、休憩後、作業の変り目など、適切なタイミングで正しい手洗いを行い、手に付着した菌を落としましょう。特に始業時や清掃後、トイレの後などは厨房内に菌を持ち込まないように、手洗いを2回繰り返す「2度手洗い」が効果的です。
器具の洗浄殺菌
使用する器具の洗浄殺菌を徹底し、器具を介して食材に菌が付くことを防ぎましょう。
衛生手袋の使用
素手からの菌の付着を防ぐために衛生手袋を活用しましょう。特に手に傷や化膿がある場合は絆創膏などの上から必ず衛生手袋を着用し、手洗いが必要なタイミングでこまめに手袋を交換することが大切です。
手荒れのケア
黄色ブドウ球菌は手の傷や化膿した場所に多く存在します。手に傷を作らないことや手荒れがある場合はハンドクリームによる保湿などで手のケアをすることも食中毒予防には重要です。

(2)黄色ブドウ球菌を「増やさない」
10℃以下での食品の保管
10℃以下の環境では黄色ブドウ球菌の増殖が抑えられ、毒素も作りにくくなります。食品を常温で長時間放置せず、10℃以下で保管し調理終了後は速やかに提供しましょう。
食品の適切な廃棄
菌が増殖しすぎた食品をお客様に提供しないよう、適切に廃棄しましょう。
特に通常よりも長時間常温で完成品が置かれているバイキングやビュッフェスタイルの飲食店では、食品の適切な廃棄も非常に重要です。調理終了や提供開始からの経過時間を把握し、提供可能時間を定めて時間が経過したら廃棄しましょう。
5.まとめ|黄色ブドウ球菌対策で信頼される店へ
黄色ブドウ球菌による食中毒対策は菌をつけない、増やさないことが非常に重要です。
食中毒は食べた人に健康被害を与えてしまうことはもちろん、お店の信頼、売り上げにも大きく関わり、一度の食中毒事故で会社へ大きな損害を与える恐れがあります。
食中毒事故が起きる前に適切な対策を行い、安心・安全な食品の提供をしましょう。
弊社BMLフード・サイエンスでは食中毒をはじめとした食品事故を予防するために多種多様な検査やコンサルティングを行っており、食品に携わる皆様の食の安全安心を全力でサポートしてまいります。お困りの際は是非弊社までお気軽にご用命ください。

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