
寿司、刺身など、生魚は日本の食卓に欠かせないものです。しかし、生魚にはアニサキスという寄生虫が潜んでいることがあり、そのまま食べてしまうと食中毒になる可能性があります。令和5年の食中毒統計では食中毒の最多原因がアニサキスとなっており、飲食店での発生も多く、営業停止や損害賠償に発展するケースもあります。
参考:令和5年食中毒発生状況(概要版)
本コラムでは寄生虫・アニサキスに対する対策について解説します。「生魚は新鮮だから安全」という認識を改め、正しい知識を身に付け対策することで、世界に誇る日本の食文化を守っていきましょう。
1.アニサキスが寄生しやすい魚介類
アニサキスは線虫の一種で、幼虫は長さ2~3㎝、幅は0.5~1.0㎜程度で、白色の糸にように見えます。アニサキスは鯨などの海洋ほ乳類の胃の中で成虫になり産卵し、鯨の排泄物と共に海洋内に排出され、排出された卵はオキアミに食べられ、その体内で成長します。そして、オキアミを捕食したサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどに寄生し、私たちの食卓へやってきます。

2.アニサキスによる食中毒
アニサキスが寄生している魚介類を、正しい処理をせず食べることで食中毒が起こります。ウェルシュ菌や腸炎ビブリオなどの細菌性食中毒では、一定の菌量が食品中に存在することで食中毒が発生しますが、アニサキスによる食中毒では、一匹でも口に入れてしまうと発生することが特徴です。
・急性胃アニサキス症:食後数時間から十数時間後に激しい上腹部痛、嘔吐、悪心
・腸アニサキス症:数時間から数日後に激しい腹痛、嘔吐、悪心、 重症化すると腸閉塞
・アレルギー症状:蕁麻疹やアナフィラキシーショック
上記のような症状の場合、内視鏡手術による虫体の摘出が必要になることもあります。


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3.アニサキス食中毒を防ぐための3つの対策
では、アニサキスによる食中毒を予防するためには、どのような対策を取ればいいか、3つのポイントをお伝えします。
ポイント①「目視」
魚の内臓を取り除き、目視でアニサキスを除去しましょう。アニサキスは内臓に寄生していますので、しっかりと取り除き、また目視確認することで食中毒を防ぐことが出来ます。
ポイント②「冷凍」
冷凍による対策も有効です。-20℃で24時間以上冷凍することでアニサキスは死滅します。
ポイント③「加熱」
加熱による対策も有効です。具体的には70℃以上の加熱、もしくは60℃1分以上の加熱であれば、アニサキスを死滅させることが可能です。
注意点
一般的な料理で使う食酢での処理や塩漬け、醤油やワサビではアニサキスは死滅しません。
ポイント①~③を確認していただき、対策をして下さい。


4.飲食店における汚染事例の傾向
アニサキスによる食中毒には次のような事例があります。
いずれも従業員が手順を遵守することで食中毒を防ぐことができた事例であり、日ごろからの従業員教育と管理が重要であることが分かります。
事例①:鮮度重視の姿勢により、冷凍処理を行わずに提供
ある店舗では、本来冷凍処理するべきサバを、冷凍せずに刺身として提供。
顧客がアニサキス症となりました。調理マニュアルを作成した上で、従業員への指導を徹底することが重要だと分かる事例です。
事例②:調理スタッフが目視確認をせずに提供
またある店舗では、本来目視確認するべき生魚をそのまま提供したことで、アニサキスによる食中毒を発生させてしまいました。
最近では「海鮮丼」や「カルパッチョ」など多様な生魚を同時に扱うメニューが増えたことで、個々の魚に対するリスク認識が薄れてしまい、結果、目視確認が徹底されない、ということもありますので、注意が必要です。

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5.おわりに
アニサキスによる食中毒は、「食の安全」が問われる現代において、飲食店が最も注視すべきリスクの一つです。
正しい知識を持つだけでなく、それらを店舗全体で共有し、徹底することで食中毒を防いでいきましょう。
詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。

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参考コラム・文献







