
本コラムでは、「チャーハン症候群(セレウス菌食中毒)」の原因や対策についてご紹介します。
1.チャーハン症候群とは何か
皆様、「チャーハン症候群」という言葉を聞いたことはありますか?
近年インターネットを中心に広まっているこの単語ですが実は正式名称ではなく、セレウス菌(Bacillus cereus)が原因の食中毒を指す通称です。
また、「チャーハン症候群」といっても、チャーハンだけで発生する食中毒ではなく、セレウス菌が原因の食中毒はパスタやピラフ、焼きそばなど様々な料理が原因食品となります。
名称の由来と発生の背景
では、なぜ「チャーハン症候群」という特徴的な名前で知られるようになったのでしょう。 1971年、イギリスの中華料理屋で米飯またはチャーハンが原因の食中毒が発生し、「Fried Rice Syndrome(フライドライス・シンドローム)」という名称が誕生しました。
この名称が広まったきっかけは、2023年頃にTikTok上で「5日間常温保管したパスタを食べた20歳の学生がFried Rice Syndrome(フライドライス・シンドローム)により死亡」として拡散されたことで、海外のSNS上で「Fried Rice Syndrome(フライドライス・シンドローム)」が話題になり、日本でもインターネット上を中心に「チャーハン症候群」との名称が広まったとされています。
2.チャーハン症候群の原因となるセレウス菌とは
(1)セレウス菌の特徴
セレウス菌は、土壌や空気中、河川水中など自然環境に広く分布しており、農作物や水産物、畜産物にも存在しています。
セレウス菌は「芽胞」を形成することが特徴です。「芽胞」とは、特定の菌が増殖に適さない環境下において形成するもので、加熱や乾燥に対し、高い抵抗性を持つため、通常の加熱条件下では死滅しません。
この菌による食中毒は毒素によるもので「嘔吐型」と「下痢型」の2つのタイプに分類されます。

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(2)嘔吐型・下痢型の違い
嘔吐型食中毒と下痢型食中毒の特徴は表のとおりです。
※食品安全委員会ファクトシート(作成日:平成23年11月24日)セレウス菌食中毒(3)食中毒(感染症)の症状より引用・「嘔吐型」
菌が食品内で増殖し、「セレウリド」と呼ばれる毒素を産生します。
また、この毒素は熱に対して高い耐性を持っており、126℃ 90分間の加熱でも失活しないと言われており注意が必要です。
・「下痢型」
食品に付着した菌が食品と一緒に体内に入り、腸管内で増殖する際に「エンテロトキシン」と呼ばれる毒素を産生します。
セレウス菌食中毒には嘔吐型と下痢型がありますが、日本では主に嘔吐型が見られます。
毒素型食中毒の主な症状としては悪心や嘔吐で、潜伏期間は0.5~6時間、発症期間は6~24時間程度です。
(3)増殖しやすい温度帯と危険な条件
セレウス菌は10~50℃の温度帯で増殖します。
そのため、加熱調理後の常温保管や緩速冷却はセレウス菌増殖リスクが極めて高く、予防のためには速やかに8℃以下まで冷却、または55℃以上の高温にて保管する必要があります。
(4)加熱しても残る芽胞の性質
セレウス菌は芽胞を形成する特徴を持ち、芽胞は90℃60分の加熱でも死滅しない高い耐熱性を持ちます。
一度形成された芽胞は、「至適増殖温度」と言われる、最も効率的に増殖する温度帯になると活性化し、毒素を産出することで食中毒症状が出現します。 このとき産生される毒素は126℃で 90 分の加熱処理でも失活しません(嘔吐型)
3.原因
では、セレウス菌食中毒はなぜチャーハンやピラフ等の米飯類で発生しやすいのでしょうか。
セレウス菌は芽胞を形成した状態で自然界に広く分布しているため、穀物などの農作物に付着していることがあります。また、芽胞は通常の加熱工程では死滅しません。
そのため、使用する米に芽胞状態のセレウス菌が付着していた場合、加熱調理工程で死滅させることが出来なかったセレウス菌の芽胞がチャーハン調理後の温度管理不良により発芽し、食中毒を引き起こす原因となります。

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4.セレウス菌が原因の食中毒事例
【直近の発生状況】
以下の表は令和7年(2025年)に発生したセレウス菌食中毒事例です。

令和7年(2025年)には5件のセレウス菌食中毒が発生しており、そのうち4件は弁当、1件は炒飯が原因食品でした。
【大規模食中毒事例について】
ここでは、令和5年(2023年)9月に発生した、八戸市で製造された弁当が原因の食中毒事例について紹介します。
【概要】
患者数:554名
主な症状:下痢、嘔吐、吐き気、腹痛
原因食品:弁当
原因物質:黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA 型)、セレウス菌(下痢毒産生)
この事例では米飯製造業者で米飯を製造し、受け入れ後盛付けをしており、 本来、米飯製造業者での米飯冷却時の冷却後温度として26-27℃というルールだったところ、42-29.8℃と、適切な温度まで冷却がされていませんでした。
また、米飯の輸送時の温度管理についての明確なルールがなく温度管理がなされておらず、受入後についても、常温で保管されている時間があったことが確認されています。 製造後の流通過程でも外気温での保管や、温度管理不明な配送工程があるなど、製造から流通までの過程で温度管理不備が多く判明しました。
結果として、セレウス菌の繁殖しやすい温度帯にさらされる時間が長くなり、セレウス菌が繁殖してしまったと考えられます。
このように、温度管理不良によりセレウス菌食中毒のリスクが上昇するため、セレウス菌食中毒予防のためには加熱後食品の温度管理がポイントとなります。
※八戸市保健所衛生課 八戸市内で製造された弁当による食中毒事例より引用
5.対策
チャーハン症候群(セレウス菌食中毒)の原因の多くは「温度管理不良の失敗」です。
そのため、予防には食中毒予防の3原則
食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」に加えて、「温度管理」についても注意が必要です。
・加熱後の食品を常温保管しない
・調理後すぐに提供・喫食しない場合は直ちに8℃以下で冷蔵保管
もしくは55℃以上での温蔵保管
・冷却時には、中心までしっかりと冷却する
以上のポイントを意識し、チャーハン症候群(セレウス菌食中毒)を予防しましょう。
6.まとめ
チャーハン症候群とは、セレウス菌(Bacillus cereus)が原因の食中毒を指す通称で、 チャーハンだけでなくパスタやピラフ、焼きそばなど様々な料理が原因食品となります。
セレウス菌は、土壌や空気中、河川水中など自然環境に広く分布しており、芽胞を形成する特徴を持つため、通常の加熱処理では完全に死滅させることはできません。
セレウス菌を増殖させないよう、加熱調理後は適切な温度での管理を徹底しましょう。
BMLフード・サイエンスでは食品工場や厨房施設を第三者目線で確認し、衛生管理体制のレベルアップをお手伝いしております。セレウス菌の予防対策や実践的な温度管理体制の構築、食品安全規格に基づく適合証明や監査代行も行っています。また厨房内のセレウス菌等の有害な微生物の存在を確認するための検査でお困りの方は、ぜひ当社までご相談ください。適切な衛生管理を実施し、安全安心な食品の提供を目指しましょう。

こちらのコラムは 第一コンサルティング本部 東京Eグループ 阿比留 千聖 が担当いたしました。
第一コンサルティング本部では飲食サービス、給食、ホテル、冠婚葬祭などの事業を営むお客さまに対し厨房の衛生点検や、品質管理システムの構築支援、従業員教育などのサービスをご提供しています。 年間40,000店舗以上の点検実績をもとにした衛生コンサルティングサービスにより、お客さまと共に消費者の安心と安全に貢献しています。







