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米飯の温度管理 〜セレウス菌食中毒を防ぐためには?〜

米飯の温度管理 〜セレウス菌食中毒を防ぐためには?〜

 食品製造業において米飯を取り扱う中で「セレウス菌」は特に注意が必要な食中毒原因菌の一つです。セレウス菌は熱耐性や酸耐性を持ち、制御が難しい食中毒原因菌ですが、適切な知識と予防策を知っておくことが重要です。

本コラムでは、セレウス菌の基礎知識や増殖条件、そして米飯を取り扱ううえでの食中毒の対策方法を解説します。

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1.セレウス菌の基礎知識

 セレウス菌(Bacillus cereus)は、土壌や空気中、水中に広く存在する好気性細菌であり米をはじめとした穀物、農産物を汚染しています。生育最適温度は28℃~35℃ですが、10℃~48℃でも増殖し耐熱芽胞を形成します。

いくつかの毒素も産生しますが食中毒に関係するのは嘔吐型と下痢型の毒素です。多くは穀物に由来し、耐熱芽胞および耐熱性毒素を形成することからセレウス菌食中毒は米飯においては炊飯調理後でもリスクとなる食中毒菌といえます。

 

2.セレウス菌食中毒について 

 セレウス菌による食中毒は主に2つのタイプに分けられます。

(1) 下痢型

腹痛・下痢などが発症。潜伏期間は822時間であり、毒素はぺプリンやトリプシンといった酵素、60℃以上の過熱、pH4.0以下の酸性条件で失活する。

(2) 嘔吐型

嘔吐型毒素(セレリウド)は菌の増殖に伴って産生され悪心・嘔吐などが発症。潜伏期間は15時間であり、消化酵素は酸性条件でも安定しており、さらに耐熱性である(120℃、15分でも失活しない)。

 

参考文献:厚生労働省HP 

 

3.セレウス菌の増殖条件

 セレウス菌が増殖するためには、一定の条件が必要です。最適な増殖温度は28℃~35℃であり、これらの温度帯で急速に増殖します。また、セレウス菌は低酸性の環境でも増殖するため、酸性が強くない食品や調理後に温度が十分に下がらない場合、増殖リスクが高くなります。

さらに酸素が豊富な環境で特に活発に増殖するため、炊飯後の米飯等が適切に冷却されず、室温で長時間放置されると、セレウス菌増殖のリスクが高くなります。


4.米飯におけるセレウス菌増殖リスク

 米飯は、セレウス菌が増殖しやすい食品の代表格です。調理後の米飯は温度が下がりやすくかつ放置しておくと緩慢冷却となりセレウス菌の最適な増殖温度(28℃~35℃)が維持されるためセレウス菌が増殖する絶好の条件を提供します。

このようなリスクを抑えるためには、炊飯後に迅速にセレウス菌の増殖温度以下まで冷却することが重要です。
米飯をはじめ加熱後食品の冷却には下記のような条件が挙げられます。

【大量調理衛生マニュアル】

加熱調理後、食品を直ちに冷却する場合には、食中毒菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くするため、冷却器を用いたり清潔な場所で衛生的な容器に小分けするなどして、30分以内に中心温度を20℃付近(又は60分以内に中心温度を10℃付近)まで下げるように工夫すること。

参考文献:大量調理施設衛生管理マニュアル

 

FDA(米国食品医薬品局) Food Code 2017

2 時間以内に 21℃以下に、さらに 4 時間以内に 5℃以下に冷却すること。

参考文献:訳 公益財団法人日本食品衛生協会

 

5.セレウス菌食中毒の対策方法 

 上述のように炊飯調理後の米飯でセレウス菌による食中毒を防ぐためには、冷却温度と冷却時間を考慮した対策を講じることが重要です。多くの食品工場では以下の方法を実践することで、リスク低減を図っています。

(1) 冷却機により急速冷却を行う

炊飯調理後に真空冷却機により急速冷却を行うことでセレウス菌増殖の至適温度を迅速に通過することができます。
この時の管理方法として、炊飯終了後から冷却開始また冷却終了までの所要時間、冷却終了後の温度をモニタリングし、緩慢冷却になっていないことを確認することが重要です。

 

(2) 冷却時間を考慮した製造工程を設計する

上述の大量調理衛生マニュアル等を参考に設定した基準温度以下また時間内に冷却が行われるように加熱工程や冷却工程が設計され、それらの工程に滞留が起きないことを検証します。
これは加熱終了から冷却終了までの所要時間、冷却終了後の温度、最終製品の微生物検査の結果をもとに検証を行います。


6.まとめ

 セレウス菌は日常的に接する可能性がある細菌で、特に米飯に関してはその危険性が高いことが分かっています。しかし、冷却方法や温度管理、時間管理を徹底することで、対策が可能です。食中毒を防ぐためには、食品の取り扱いに対する意識を高め、安全な食品安全管理体制を築いていくことが重要です。

 
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こちらのコラムは 第三コンサルティング本部 総合Aグループ が担当いたしました。

参考文献

食品衛生学(出版:東京化学同人)

 

 

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