
食物アレルギーとは、食品に含まれている特定のたんぱく質を食べた時に発症する疾患のことです。食物アレルギーの中でも即時型アレルギー症状は、2時間以内に発症するのが一般的です。重篤な場合、アナフィラキシーショック症状がおこり、最悪の場合は死に至る場合もあり、食品関連事業者にとって対策が必要です。
1.食物アレルギーの種類
2025年12月23日現在、特定原材料は8品目、特定原材料に準ずるものは20品目となっています。
特定原材料8品目

特定原材料に準ずるもの20品目

2026年春頃を目途に特定原材料にカシューナッツ、特定原材料に準ずるものにピスタチオが追加される予定です。
カシューナッツの義務化予定とピスタチオの特定原材料に準ずるものへと追加される背景については下記コラムに詳細が載っておりますので、是非ご一読いただければと思います。

関連コラム:アレルギー表示制度の改正 ~カシューナッツ表示義務化とピスタチオ推奨表示追加予定の要点を解説します~
本コラムでは、アレルギー表示の対象品目、カシューナッツが特定原材料へ移行する方針、ピスタチオが特定原材料に準ずるものに追加する方針が示された背景や今後の動向、食品事業者に求められる対応について、要点をわかりやすく解説します。
2.食物アレルギーの事故事例について
重篤な症状を引き起こした食物アレルギーの事故事例を紹介いたします。
(1)アレルゲン情報欠落によるアナフィラキシーショックを発症
令和2年11月、子供が生菓子を喫食したところ、腹痛、嘔吐、じんましん、顔面の発赤を呈しました。子供は乳アレルギーを持っており、医療機関を受診したところ、アナフィラキシーショックと診断。原因として、販売した生菓子に、アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因となる物質のこと)の乳成分が含まれているにもかかわらず、アレルゲン表示をせずに販売したことが判明し、回収命令が発令されました。
※参照 令和2年11月19日 松戸市健康福祉部衛生指導課
(2) 確認ミスによる食物アレルギー死亡事故
2012年12月、東京都の小学校で乳アレルギーの小学5年生女児が、おかわりをした際に誤って粉チーズ入りのチヂミを喫食し、給食終了から30分とたたない間に体調不良を訴え病院に搬送されたましたが死亡。
担任教諭が、本来確認が必要である、「除去食一覧表(担任用)」を確認しなかったことが原因の一つとなっています。
参考:日経メディカル 食物アレルギーによる死亡事故はなぜ起きた?2013/06/14
3.食物アレルギー対策
上記で紹介いたしました食物アレルギー事故事例を発生させないためにも食物アレルギーの対策が重要となります。アレルギー事故発生時はもちろんのこと、事故が発生していなくても健康被害防止のため実際に商品回収になる事例が毎日のように発生しています。(表1)
表1.商品回収事例

回収には莫大な経費がかかり、会社の信頼にも大きな傷がつきます。
また、場合によっては損害賠償責任を負う可能性もありますので徹底した対策が必要です。
各工程(事前準備、製造・調理時、販売・提供時)におけるアレルギー対策を順番にご紹介いたします。

(1)食物アレルゲンの管理(事前準備)
アレルゲン情報の入手
アレルギー情報は最新性と正確性が非常に重要となりますので、正確な情報を原材料規格書等でサプライヤーから取得しましょう。仕入れ先や原材料の変更があった場合、原材料のアレルゲンが変更になる可能性があるため注意が必要です。
リスク分析&防止策考案
HACCPにおける危害分析の話にもなりますが、製造環境や使用設備、作業員の動線等におけるコンタミネーション懸念箇所を洗い出し、危害分析を適切に行うことが必要です。分析後、原材料保管方法や調理器具の洗浄・区分け、オペレーションや作業動線等を見直しして防止策の考案をしましょう。
しかしながらどれだけ注意して管理をしても、微量のアレルゲンが残る場合があります。アレルゲン残留の有無は製造環境の簡易検査や、最終製品の検査による評価の実施も有効です。自社で設定した対策が有効か、環境検査や製品検査による検証を活用しましょう。
食品表示、アレルゲン一覧表作成
原材料由来・工程由来のアレルゲン情報を把握してアレルギー表示内容を決定します。コンタミネーションによる混入の可能性を排除できない場合には一括表示外に注意喚起をすることもできます。

アレルゲン一覧表の作成においては、個人の知識・経験に左右されない仕組みを構築することが必要であり、レシピ、メニュー表、一覧表等は常に最新版を準備することが重要です。
期間限定のメニュー販売時や、レシピ変更時にも注意が必要です。
アレルゲン対応ルール化
まず、特定原材料の8品目のみ対応するのか、もしくは推奨を含めた28品目まで対応するのか、対応範囲を明確にすることが重要です。飲食店においてお客さま対応をする場合は時間帯責任者等、アレルギーに関する質問への対応者を決めておくこと、お客様へのヒアリング項目を明確にして、記録様式や伝達方法を決めておくことも推奨します。
◇どの程度で発症するか
◇コンタミネーションレベルでも発症するか
◇過去に重篤な症状(アナフィラキシーショック)の発症歴があるか…等
(2)食物アレルゲンの管理(製造・調理時)
設備・調理器具の洗浄
食材に多く含まれるタンパク質は低温下では洗浄効果が上がりにくく、また、高温下では熱変性を起こし、機械や器具に凝固する可能性があります。タンパク質の汚れを落とすためには、40℃~50℃のお湯が良いとされています。
アルカリ洗剤を使用するのも効果的で、アルカリ洗剤はタンパク質と結合し、溶かす性質をもっている他、頑固な油汚れにも効果があります。アルカリ洗剤はタンパク質に対する洗浄効果が高い一方、粘膜や皮膚に対しても刺激があるため食材に混入することがないよう、使用後は十分にすすぎを行います。
原材料保管方法
誤使用を防ぐため、アレルゲンが含まれる原材料にはマーキングやタグ表示を行い、中身が明確に分かるようにしましょう。
アレルゲンを含む原材料は下段に保管(液垂れによるコンタミネーション防止)する、密閉容器に保管する等の対策が有効です。小麦粉やそば粉などの粉体は、飛散しやすく、他の食品に付着するおそれがあるため、専用のスペースで保管や計量等の作業を行うことも対策の一つになります。
作業時の注意事項
ユニフォームを介したコンタミネーションが発生しないよう、着用前には清潔で汚れが付着していないか確認しましょう。 試作品の原料使用時などイレギュラーが発生した時はアレルギー管理上問題がないか注意しましょう。
特定原材料を含まない製品から順番に製造するなど調理、製造の順番を工夫し、調理器具や手袋を介したコンタミネーションが発生しないよう、取り扱いましょう。従業員や原材料・製品の移動時に周囲を汚染しないか注意しましょう。
製造場、厨房の清掃は適切な頻度で実施し、これらの手順が新人などをふくめたすべての従業員へ伝達がされているかも注意すべきです。
(3)食物アレルゲンの管理(提供・販売時)
プライスカード・店頭POP表示
プライスカードや店頭のPOPにてアレルゲンを表示する場合、商品とプライスカードのアレルゲン表示の整合性が合っているか確認をしましょう。
プライスカードにアレルゲン表示が一部漏れていた場合は事故に繋がる可能性があります。また、商品ごとにプライスカード等で対応しているアレルゲンの範囲がバラバラで、一部の商品はプライスカードにアレルゲン表示していない場合もお客様へ誤認を招く可能性がありますので、ルールを統一することが重要です。


お客様への説明、対応
お客様からお問い合わせがあった場合、事前に取り決めたルールに従って対応をすることが必要です。「おたずねの○○○は含まれていないと思います」等と憶測で回答しないことが必要で、分からない時は「確認いたしますので、しばらくお待ちください」とお時間を頂いて、調べてから正確な情報を伝達しましょう。
担当者はお客様に規格書等の情報をもとに、正しく説明することも大切です。 一例ですが、「各メニューのアレルギーはこのとおりです。ただ当店ではさまざまな食材を調理しておりますので、微量な混入(コンタミネーション)がある場合がございますことを、ご了承いただければ幸いです」等と商品に含まれていなくても微量に付着する危険性があることも伝達しましょう。
一括表示の貼り付け
販売時におけるアレルギー表記ミスによる回収は、ほとんどが貼り間違いによるものが多く、貼り間違いがないようにダブルチェックする等確認することも重要になります。
4.まとめ
食物アレルギーは命に係わるため、一つのミスで大きな問題となってしまいます。
アレルギー表示の欠落はリコール(自主回収)の届出対象となり、回収には多額の費用がかかるだけでなく、社会的な信頼を失うことにもつながります。また最悪の場合、消費者の健康だけでなく命を脅かしてしまう恐れがあります。 BMLフード・サイエンスでは、食品表示の点検・作成だけでなく、食品表示に関するコンサルティングや講習会なども行っております。食品表示に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。 詳しくは、「食品表示関連業務」のページをご覧ください。
BMLフード・サイエンスは、食品の微生物・理化学検査をはじめ、商品の品質検査、飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組みづくり、食品安全認証の取得支援まで、ワンストップでサービスを提供できる総合コンサルティング企業です。 長年培ってきた高度な検査技術とノウハウをもとに、質の高い各種検査とコンサルティング事業体制を構築しており、全国を網羅したネットワークにより、スピーディなサービスを提供します。
詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。


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こちらのコラムは 第二コンサルティング本部 西日本グループ が担当いたしました。
第二コンサルティング本部では飲食サービス、給食、ホテル、冠婚葬祭などの事業を営むお客さまに対し厨房の衛生点検や、品質管理システムの構築支援、従業員教育などのサービスをご提供しています。 年間40,000店舗以上の点検実績をもとにした衛生コンサルティングサービスにより、お客さまと共に消費者の安心と安全に貢献しています。





