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ホテル衛生管理の基本とHACCP対応ガイド ~ホテルの衛生対策とは?安全な運営の必須知識~

ホテル衛生管理の基本とHACCP対応ガイド ~ホテルの衛生対策とは?安全な運営の必須知識~

 新型コロナウイルス蔓延による外出自粛の影響を大きく受けていたホテル業界は、現在インバウンド需要の回復に伴い勢いを取り戻しつつあります。円安の後押しもありホテル事業の需要は増していく中、これから衛生管理の体制を作っていきたい方や今の体制に不安のある方へ食品衛生の観点での衛生管理の基本についてご紹介いたします。

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1.ホテルにおける衛生管理の重要性

 ホテル運営のメインは宿泊業ですので、飲食の提供は必須ではありません。ただ、国内、国外からの観光客やビジネスパーソンのホテルの選定基準の一つとして食の提供は大きなウエイトを占めており、また利用したいというリピーターを生み出すためのきっかけともなりえます。

 他方、飲食物は人の口に入るもので、リスクもはらんでおり、食中毒事故を発生させてしまうと行政上、刑事上、民事上の責任だけではなく社会的責任も負うこととなります。特にテレビのニュースやSNSによる情報の拡散はホテルのブランドを著しく毀損し、ホテルに対して長期にわたってマイナスな影響を与えることが懸念されます。

(1)顧客満足と企業信頼を支える衛生体制

次にホテルの衛生管理と顧客満足を考えてみると、目に見えにくい衛生管理は、一見関係のないように感じるかもしれませんが、衛生意識の高い日本においてはネガティブな情報は最終的にお客様のホテルに対する印象を大きく下げてしまう恐れがあります。

また、食品衛生に関する取り組みはマイナス面をフォローするだけではなく企業の信頼を獲得するためにプラスとなるものもあります。昨今の食に関するサービスを見ていくとアレルギー情報の提供やビーガン、ハラルへの配慮、SDGsへの取組、食品安全のための規格認証の取得(JFS規格(フードサービス)等など)など、法律では義務とはなっていない+αの取組がお客様のニーズを満たす大きな要因となっている実情もあります。

当社サービス【適合証明事業】

食品安全規格JFS-A/B/B Plus規格、およびJFS規格(フードサービス、フードサービス・マルチサイト)の適合証明を行います。特にJFS-B規格では業界No.1の実績を保有。監査・指導を通じて食品安全管理体制を向上します。



(2)法律・ガイドラインに基づく衛生管理の義務

ホテル運営における飲食提供について、遵守すべき法律は多くあり、その一例として下記のものがあります。

【食品衛生法】
飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上と増進を目的 とした法律。
食品安全に関する取り決めの大本となる。

【食品表示法】
食品の情報を伝えている表示基準などを規定している法律。
消費者が食品 を正しく理解し、安全に選択できることを目的とする。

【景品表示法】
食品に限らず、様々な商品・サービスについて消費者に誤解を招く表示を規制する法律。
消費者が適正に商品を選択できるようにすることを目的とする。


これらの中でも食品衛生法は食品安全を守るための中核をなすものであり、令和3年6月に完全施行された法改正では全ての食品関連事業者にHACCPに沿った衛生管理を求めています。

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2.HACCPに基づくホテル衛生の基本

 初めてHACCPに関わる場合、なかなか理解しにくい部分もあるかと思いますので、ここからはHACCPに沿った衛生管理について説明いたします。

HACCPへの取り組み方には「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」の2パターンがあります。

「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」の手引書については厚生労働省のホームページからダウンロード可能となっています。

ホテル・旅館業態に対応した手引書については、下記2つが掲載されています。
【旅館・ホテルにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書】
作成団体:全国旅行ホテル生活衛生同業組合連合会

【ホテル事業者が実施するHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書】
作成団体:一般社団法人 日本ホテル協会

参照:厚生労働省 ホームページ HACCP(ハサップ)|厚生労働省


(1)衛生管理計画の立案と手順

HACCPへの取り組みの第一歩として衛生管理計画の立案があります。ここでは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実施する場合についてご説明いたします。
ホテル・旅館事業者向けの手引書で作成する計画は【一般衛生管理計画】と【調理工程における重要管理計画】の2つがあります。

一般衛生管理

一般衛生管理計画では、食中毒事故を起こさないためにどの食品でも行うべき共通事項について記載します。具体的な管理項目としては「原材料の受入確認」「冷蔵・冷凍庫の温度確認」「交差汚染・二次汚染の防止」「器具等の洗浄・消毒・殺菌」「トイレの洗浄・消毒」「従業員の健康管理等」「手洗いの実施」などがあります。それぞれの項目に対して【いつ実施するのか】【どのように実施するのか】【問題発生時の対応方法】を設定します。

関連コラム:知っておきたい!厨房の衛生管理の「3つのポイント」

本コラムは厨房の衛生管理について知ってほしいポイントを3つに絞ってご紹介します。

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重要管理

調理工程における重要管理計画は、食品の調理工程に合わせて管理するポイントを設定する計画になります。
まず始めに、提供するメニューを下記の3グループに分類します。

① 非加熱のもの(加熱調理せず、冷たいまま提供)

② 加熱するもの(加熱調理し、熱いまま提供)

③ 加熱後冷却するもの(再加熱するもの、冷却後冷たいまま提供)

提供メニューのグループ分け後、それぞれのメニューについて危害を防止するためのチェック項目、問題発生時の対応方法を設定します。

例えば②グループで「ハンバーグ」があると仮定するとチェック項目として「中心温度が75℃1分以上になるように加熱を行う」

問題発生時の対応として「計画通りの管理ができなかった場合、廃棄する」といった内容が考えられます。

チェック項目については実測での温度確認を必須とはしておらず、「肉汁の色が透明になったら」や「沸騰したら」など様々な物性も考えられますが、その物性と基準温度については紐づいていることが食品安全を担保する上ではとても重要になります。
 

提供スタイル別衛生管理

前述した「一般衛生管理計画」と「調理工程における重要管理計画」は飲食を提供する様々な事業者が共通して実施する内容になります。一方、ホテルの特色として食事の提供スタイルが多様であることが挙げられます。主に想定される提供スタイルとして「宴会」「ビュッフェ」「ルームサービス」「ケータリング」があります。

提供スタイルが異なると思わぬ食中毒事故が発生するリスクがあるため、それぞれの提供スタイルごとに衛生管理計画を設定することを推奨します。 例えば、ビュッフェスタイルでの提供であれば、トング等の交換頻度の設定、提供時間の期限設定、陳列中の温度管理などを計画に盛り込むことが想定されます。

参照:【ホテル事業者が実施するHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書】
   作成団体:一般社団法人 日本ホテル協会 


(2)記録の実施と重要性

計画を立案したら、計画に沿って衛生管理を実施していきます。実施した内容は日々記録を残し、計画に基づいた衛生管理ができているか「可視化」します。記録する内容は計画通りにできたかどうかの可否を記入し、また計画通りに実施できなかった場合は、その理由とどのように対応したかを記録します。

記録を残すことにより、食中毒事故が発生した際に適切な衛生管理ができていた証拠になり、原因究明の手がかりとなります。お客様や保健所に対して自信を持って衛生管理状況を説明するためにも記録の管理は重要になります。

(3)衛生管理状況の振り返りと見直し

衛生管理計画・記録については定期的に振り返り、管理状況に問題はないか見直すことが適切な衛生管理を実施していく上で大切です。例えば、記録を見返した際に頻発している問題があるのであれば、衛生管理計画自体が厨房の実態に適していない可能性があります。振り返りを行い、計画を改善していくPDCAサイクルを回していくことで、衛生管理計画はよりホテルの実態に則したものになっていきます。

また、ホテルであればバレンタイン・クリスマス・年末年始と季節メニューを提供する場合があります。そういったメニューに対しても調理工程における重要管理計画は必要になりますので、提供メニューに沿って衛生管理計画を更新する必要があります。


 

3.ホテル従業員の衛生意識と教育

 ここまでHACCPへの取り組み方についてお話してきましたが、HACCPを有効に実施していくには計画で定めた内容を継続的に行っていく必要があります。そして計画の内容を漏れなく実施するためには、各従業員の衛生意識が重要であり、衛生計画を食品に関わる人の共通認識とする必要があります。

一方で、飲食業界は慢性的な人手不足であり、それはホテルの厨房も例外ではありません。衛生管理を実施していくためには、従業員の教育といった部分も重要になってきます。

(1)衛生教育の実施と研修内容

では、従業員の衛生意識を向上させていくためにどのような教育研修を行う必要があるか考えられる研修を下に記載します。

・衛生管理計画の内容と重要性

・5S・身だしなみ・衛生的な手洗い

・ハザード(危害)の理解と管理方法

・アレルギー対応の重要性

・宗教などによる食事制限対応について

・体調管理の重要性    …など

ここでは例として、一部の教育内容をお伝えいたします。

アレルギー対応の重要性

アレルギーは人の命に関わる重要な管理項目になります。ホテル・旅館としてアレルギー対応が可能なのか、正しい工程を行うことができるのか、従業員はアレルギー対応を行えるだけの知識を有しているか考える必要があります。アレルギー対応において一番大切なことは、お客様に正しい情報を提供することです。アレルギー対応を適切に行えるようなマニュアルの作成、またマニュアルを正しく実行できるように従業員教育を実施しましょう。宿泊業ですので、店内でお客様から口頭で質問があった場合だけでなく、修学旅行生のような団体客の対応を想定したマニュアルが必要となります。

アレルギーに関する取り決めは頻繁に更新されています。そのため常に情報のアップデートが求められますので、従業員教育に関しては定期的に実施していきましょう。また、新卒で入社した従業員と厨房の責任者では把握しておくべき知識・情報は異なります。職責にあった教育研修を行いましょう。

BMLフード・サイエンス飲食店アレルギー対策

関連コラム:食物アレルギー対策マニュアル~食品事業者が実施すべき管理体制~

食物アレルギーの中でも即時型アレルギー症状は、2時間以内に発症するのが一般的です。重篤な場合、アナフィラキシーショック症状がおこり、最悪の場合は死に至る場合もあり、食品関連事業者にとって対策が必要です。

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宗教等の食事制限対応について

冒頭で述べたように、現在日本のホテルは国内外の多様なお客様に利用されています。中には、宗教上の理由から特定の食材の喫食を制限している方もいます。そのため宗教上の理由で喫食できない食材があるお客様への対応も必要になってきています。ただし、制限される内容は多種多様であり安易な対応は大きなトラブルに繋がる恐れもあります。

そのためホテル・旅館として、そもそも対応が可能なのか、対応する場合はどこまでを対象とするのか一度考える必要があります。アレルギー対応と同様、お客様が安心してメニューを選べるように正確な情報をお伝えできる体制を整えていきましょう。参考として国土交通省 観光庁ホームページに多様な背景を持つ外国人旅行者のおもてなしガイドブックが掲載されていますので、ご紹介いたします.

参照:国土交通省 観光庁 ホームページ 多様な背景を有する訪日外国人旅行者の受入環境の充実 | 多様な宗教的、文化的習慣を有する旅行者の受入環境の充実 | 観光地等の外国人対応の推進 | インバウンド受入環境の整備 | インバウンド回復戦略 | 観光政策・制度 | 観光庁

体調管理の重要性

食中毒予防の三原則として①つけない ②増やさない ③やっつける(殺菌・消毒)という言葉があります。この三つを守ることが食品衛生の基本になります。【①つけない】を守っていくために、従業員・スタッフの健康管理が大切になります。

食品に関わる人が食中毒菌・ウイルスを保持していると二次汚染により食中毒事故を発生させることがあります。菌・ウイルスを厨房に持ち込まないために従業員の健康管理として、以下を徹底しましょう。

① 勤務前の健康チェック
健康状態の確認(下痢、嘔吐、発熱、腹痛症状の有無)、同居者の健康状態、手の荒れ、傷、化膿創はないか

② 食中毒リスクのある食材の喫食を避ける

③ 検便検査の実施

食中毒リスクのある食材としては、生の牡蠣や二枚貝、食肉(生)、ヒラメ(適切な冷凍または加熱処理を加えていないもの)などが挙げられます。こういった食材の喫食については、ホテル・旅館としてルールを定めることを推奨します。 健康保菌者(感染しているが食中毒症状が出ていない者)による食中毒の発生を防ぐために定期的な検便検査の実施が有効になります。また、ノロウイルスが流行する10月~3月には、ノロウイルス検査を実施することが推奨されています。

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関連コラム:検便検査の必要性と陽性時の対応

検便検査はどうして必要なのでしょうか?本コラムでは検便の必要性と各業界の実施状況や検査項目、頻度の考え方などをご紹介します。

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上で述べた食品衛生に関する教育の他に、SNSリスク研修などのコンプライアンス研修も実施すべき研修として想定されます。アルバイト・技能実習生・新入社員・現場責任者など様々な立場の従業員がいますので、階層別に必要な要素を絞った教育・研修を実施していくことで、効果的に従業員の衛生知識、衛生意識を向上させていきましょう。

 

4.まとめ|安心・安全なホテルづくりへ

 本コラムではホテルや旅館業の衛生管理体制を整えたい方や今の体制に不安のある方へ食品衛生の観点での衛生管理の基本についてご紹介してきました。HACCPへの取り組みについては、基本的な部分はもちろんですがホテル・旅館特有の管理ポイントを押さえることで実態に合った衛生管理を実施していきましょう。また、従業員の衛生意識レベルがホテル・旅館全体の衛生レベルに直結します。教育・研修を通して、衛生管理を実施していける基盤を構築していきましょう。

BMLフード・サイエンスは、食品の微生物・理化学検査をはじめ、商品の品質検査、飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組みづくり、食品安全認証の取得支援まで、ワンストップでサービスを提供できる総合コンサルティング企業です。 長年培ってきた高度な検査技術とノウハウをもとに、質の高い各種検査とコンサルティング事業体制を構築しており、全国を網羅したネットワークにより、スピーディなサービスを提供します。

詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。

もし食品衛生管理や従業員の育成に関してお困りごとなどございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

セミナーバナー(コラム用)

こちらのコラムは 第一コンサルティング本部 東京Cグループ 森 駿介 が担当いたしました。

第一コンサルティング本部では飲食サービス、給食、ホテル、冠婚葬祭などの事業を営むお客さまに対し厨房の衛生点検や、品質管理システムの構築支援、従業員教育などのサービスをご提供しています。 年間40,000店舗以上の点検実績をもとにした衛生コンサルティングサービスにより、お客さまと共に消費者の安心と安全に貢献しています。

 

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