
厨房内の汚れは、単に洗剤を使用して清掃すれば落ちるものではありません。洗剤にも種類があり、汚れにも種類があります。本コラムでは、床・換気扇・ドライ環境、油汚れなど、汚れや場所に応じた掃除方法を解説します。
1.汚れの種類に応じた厨房内の清掃方法
汚れに合った洗剤を使用すれば効率よく汚れを落とすことができますが、合わない洗剤を使用した場合、こすりすぎて洗浄箇所を破損させたり、劣化させる恐れがあります。また無駄な洗剤を使用してコストがかかるだけになることもあります。
正しい洗浄方法を学ぶことで、無駄なコストと労力を抑える事ができ、厨房の衛生状態を良好に保てるようになります。まずは汚れの種類に応じた特性を説明します。
(1)油汚れ
牛脂やサラダ油などの油汚れは、温度が低いと固まりやすくなる特性があります。そのため洗浄時に使用する水の温度を高くすることで汚れを落としやすくすることができます。
(2)でんぷん汚れ
でんぷん汚れは乾燥すると固まり、汚れが落としづらくなります。そのため米飯や小麦粉、じゃがいもなどでんぷんを多く含む食品を使用した器具や食器は、乾燥する前に洗浄するか、水やお湯につけておくことが望ましいです。
(3)たんぱく質汚れ
肉や卵、牛乳、ドリップなどに起因するたんぱく質汚れは、加熱すると凝固し汚れを落としづらくなります。これらの汚れを含む場合は、まず冷水やぬるま湯で洗い流すことが有効です。もし、たんぱく質汚れが残っているまな板に熱湯をかけたりすると、汚れが変性してしまい、通常の方法では汚れを落とすことができず、交換せざるを得なくなってしまいます。
2.汚れに合わせた洗剤の選び方
続いて代表的な洗剤の種類とその特性について説明します。また洗剤の希釈に関しては必ずメーカーの基準に準ずる倍率にて希釈して下さい。
(1)中性洗剤
中性洗剤とはpH6~8の広く一般的に使用できる基本の洗剤となります。アルカリ洗剤や酸性洗剤に比べ皮膚や素材を傷める可能性が低く、使い勝手が良いことが特徴です。界面活性剤を主成分としており、界面活性剤が油汚れを取り込んで引き離し、離れた油汚れが細かい粒となって水の中に散らばり、水とともに流し去ることで汚れが落ちます。比較的安全に使用できるため食器や包丁、まな板などの調理器具を洗浄する際に選ばれることが多いです。
(2)アルカリ洗剤
アルカリ洗剤は、pH8以上の油汚れやたんぱく質汚れを分解・溶解する働きがある洗剤です。特にひどい油汚れやたんぱく質汚れ、焦げ付いた汚れを洗浄するために使われることが多く、床や壁、フライヤーやスチームコンベクションなどの加熱調理機器の洗浄に用いられることが多いです。油やたんぱく質に作用するため、手指などで直接触れると肌荒れの原因となってしまいます。特に粘膜など皮膚の弱い部分には影響が強く出るため、使用する際は手袋やゴーグルの着用が必要です。また、アルカリ洗剤はアルミニウムに対して反応しやすく変色や融解を引き起こすことがありますので、別の容器に移し替えることは避けましょう。
(3)酸性洗剤
酸性洗剤は、pH6以下の主に水垢(スケール)汚れを洗浄する際に使用する洗剤です。皮膚に触れるとやけどを引き起こし、塩素系漂白剤とまざると危険な塩素ガスを発生するため取扱いには注意が必要です。水道周りや、トイレ、食器洗浄機の内部の汚れを除去するのに用いられることが多いです。酸性洗剤は大理石やステンレスと反応し、変色を引き起こすことがあるため、使用する場所にも注意が必要です。
3.清掃個所に応じた清掃方法
床や換気扇、コンロやオーブンの周りの清掃に関するお悩みの声を多く聞きます。また、シンクや排水溝、グリストラップなどの水回りの清掃もやや特殊で難しいところがあります。ここでは、これらの箇所について清掃方法を個別に説明していきます。
(1)床の洗浄方法
床の清掃は、ウエット式の床とドライ式の床とで大きく2パターンに分けることができます。ここでは、それぞれの場合での清掃方法を見ていきましょう。
ウエット式の床の場合
① ほうきや掃除機などを使用して、大きめのごみや埃などを掃除する。
② 水を流し、中性洗剤を使用してデッキブラシなどでこすり洗いをして、流水で洗剤と汚れを排水溝に流す。
③ ひどい汚れや落ちにくい汚れなどはアルカリ洗剤を使用する。残った水気などはスクイージーで排水溝に流し、なるべく水気が残らないようにする。
ドライ式の床の場合
① ほうきや掃除機などを使用する。
② 汚れのひどい部分はモップを使用して汚れを落とす(使用する洗剤は中性洗剤を優先し、アルカリ洗剤を使用した場合は洗剤が残らないように水拭きをする)。
③ 仕上げに水気を切ったモップで拭き上げる。
(2)換気扇の洗浄方法
① 換気扇の周辺を養生する。
② できる限り換気扇の分解をして洗浄をする。
③ 分解した部品は、酸素系漂白剤をぬるま湯で希釈したものに20分程漬け込み、ブラシなどを使用して洗浄する。
(3)汚れのひどい部分の洗浄方法
① 酸素系漂白剤を使用して漬け込むことができるものであるなら、30分程漬け込んだ上でブラシなどを使用する。
② 漬け込むことができない床などは、ぬるま湯で溶かしたものを毎日流し続ける。デッキブラシが使用できる箇所は、こすり洗いする。
(4)コンロ回りの洗浄方法
① 五徳(鍋やフライパンなどを置く台)は、酸素系漂白剤をぬるま湯で希釈したものに15分ほど漬け込む。
② 漬け込みに使用した洗剤はブラシなどでこすり汚れを落とす。
③ どうしても落ちない汚れはペーパータオルなどを貼り付け、アルカリ洗剤をスプレーし、しばらく置き汚れを浮かした上でブラシなどを使用して汚れを落とす。
(5)シンクの洗浄方法
① 中性洗剤を使用して汚れを落とす。
② カルキ(白い汚れ)が蓄積したら、酸性洗剤を使用してこすり、汚れを落とす。
③ カルキ(白い汚れ)が落ちないほど蓄積した汚れは、ペーパータオルを貼り付けた上で酸性洗剤を吹き付け、ラップで覆い、しばらくしてからこすり洗いをする。なお、こすり洗いをする際は、シンクに傷がつかないようスポンジや布巾などやわらかいものを使用することを推奨します。
(6)排水溝の洗浄方法
① 蓋を取り外して溝の部分をデッキブラシでこすり落とす。
② 蓄積した汚れがある場合は、アルカリ洗剤を使用して落とす。
③ グレイチング(排水溝の蓋)に蓄積した汚れは、アルカリ洗剤をお湯で希釈し、グレイチングに流し、デッキブラシでこすって洗浄する。
(7)グリストラップの洗浄方法
① 一槽目のごみ取カゴ内の残渣を取り除く(毎日作業する箇所)。
② 二槽目の表面に浮いている油分を取り除く(スコップやスクレーパーなどで)。
③ 最後の槽の底に沈んでいる汚泥を取り除く。
④ 全部の槽を水で流してきれいな状態にする。
⑤ 蓋の裏を洗浄して蓋をして終了。
(8)水回りの洗浄方法
① 中性洗剤で汚れを落とす。
② カルキ汚れは酸性洗剤を使用して落とす。
4.洗浄用具の取り扱いについて
ここまで汚れの種類に応じた対応方法、洗剤の種類と選び方、場所に応じた洗浄法について説明してきました。
一方で洗浄用具については見落としがちな重要ポイントです。
正しく洗剤を選んでも洗浄用具が汚れていたり劣化したりしていると、汚れを落としているつもりでも十分な洗浄効果がなかったり、かえって汚れをこすりつけてしまうことになったりします。特にまな板など直接食材を乗せるものについては、アレルギーのコンタミネーション防止の観点からも、必要に応じ洗浄用具を専用のものにした方が望ましく、専用としたとしても、洗浄用具に汚れが残らないよう、洗浄後に洗うことは必須となります。
また調理段階において、汚染区域(下処理など生肉を扱う等)と清潔区域(完成した商品を盛り付ける等)を分けて作業をしていても清掃用具が共通していて、これらの区域を清掃用具が介して汚れを運んでしまうことがあります。そのようなことが無いよう、清掃用具はそれらの区域ごとに分けて準備して下さい。
5.まとめ
清掃、洗浄は毎日やらなければならない作業であり、やり方を間違えると汚れが十分に落ちず、日々蓄積してしまいます。蓄積した汚れに漂白剤などを使用すると科学反応を起こし、落ちない汚れに変化してしまいます。また汚れに合った洗剤を使用しないと労力を無駄にするだけはなく洗浄箇所を破損させたり、劣化させることにつながります。
汚れに合った洗剤を使用し、正しく洗浄することにより、清潔に保てるだけでなく、コストの削減にもつながります。適切な洗剤や洗浄用具、洗浄方法を選択し、きれいな厨房を維持しましょう。
BMLフード・サイエンスでは厨房施設を第三者目線で確認し、衛生管理体制のレベルアップをお手伝いしております。洗浄方法や洗剤の選び方など、多くの厨房を見ているコンサルタントから現地でのアドバイスも対応しています。衛生管理でお困りの方は、ぜひ当社までご相談ください。正しく衛生管理を実施し、より高い安全安心な食品の提供を目指しましょう。

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参考コラム・文献
- 東京ガス株式会社 https://kaji.tokyo-gas.co.jp/column/detail_4050
- ライオンハイジーン株式会社 https://www.lionhygiene.co.jp/learning/start/manual/13/
- 株式会社ダスキン https://biz.duskin.jp/biz/sanitation/lecture/
- リ・プロダクツ株式会社 https://www.re-products.co.jp/media/column/haccp
- 株式会社テラモト https://www.teramoto.co.jp/columns/14618/
- 食品産業 洗浄と殺菌のガイドブック(小野晴寛・日本食糧新聞社)
こちらのコラムは 管理企画本部 管理グループ 茅本 修一 が担当いたしました。








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