
飲食店の厨房内では食材のほか、調理器具類、容器包装、事務書類、私物など様々ものが保管され、使用されています。もちろんそれらは飲食店で仕事をするうえで必要不可欠なものであり、それらを使用していること自体は問題ではありません。しかしながらそれらが何らかの理由でお客様へ提供する食事の中に混入してしまうことがあります。それが異物混入の主な原因であり、事故やトラブル、不信感を生む原因となります。 しかし、このような異物混入は対策をすれば未然に防げることも事実です。厨房ごと、業態ごとの特性に応じた対策は必要ではありますが、ここではどの厨房でも実施いただける対策の考え方をリスクと共にご紹介させていただきます。
※本コラムは当社にて2023年に開催し、ご参加者の高い満足度を得られたセミナー、「異物混入対策セミナー(飲食店編)」の内容をもとに作成をしています。当社では飲食店をはじめ、食に関わる企業の役に立つ無料セミナーを数多く開催しています。現在お申込みを受け付けている無料セミナーはこちらからご確認ください。研修・セミナー情報|BMLフード・サイエンス
1.異物の定義とリスクの理由
異物とは何なのでしょうか。日本の食品衛生検査指針第9章では「異物は、生産、貯蔵、流通の過程で不都合な環境や取扱い方に伴って、食品中に侵入または混入したあらゆる有形外来物」とあります。つまり、実害があろうとなかろうと食品中にないはずのものがあるとそれが異物と定義されます。
では、異物が混入してしまうこと自体が良くないという認識は皆さんお持ちかと思いますが、具体的にはなぜ良くないのでしょうか。 理由を大きく分けると、怪我と不信感(ブランドイメージ低下)の2つがあります。
飲食店で注文した料理に異物が混入しており、お客様が気づかずに喫食してしまった場合、異物が金属由来の硬いものだと歯が折れてしまいます。鋭ければ口内で出血を伴うけがを負う可能性があります。不衛生なものだと腹痛などの症状を引き起こしたりします。また、喫食者が小さいお子様などの抵抗力の弱い方であった場合、生死にかかわることもあるでしょう。
お客様が喫食前に気づいて怪我が起きなかったしても、楽しい食事の気分を害することに変わりありません。お客様は異物の混入した食事を提供したお店に不信感を抱くでしょうし、ましてやチェーン店ならなおさらブランドイメージの低下につながります。
実際に異物混入のアンケート(出典:甲南防疫株式会社(「食品関連事業者における衛生管理」に関する実態調査(2023年)))を見てみると、異物混入のニュースを見て、72.3%の方が不快に感じている結果となっています。特に昨今ではSNSを利用して一般のお客さまが簡単に情報を発信できる影響力を持っております。異物混入事故があると、すぐさま情報が拡散され、いわゆる炎上状態になりえます。調べさえすれば、過去の事故事例がインターネット上に残り続ける世の中です。
このような背景から異物混入事故は、1度でも起こさないことが何よりも望まれます。
2.異物の原因
それではこれらの異物混入の事故はなぜ起こるのでしょうか。厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業) 「小規模事業者等における HACCP 導入支援に関する研究」 令和元年度分担研究報告書 全国における食品への異物混入被害実態の把握 (平成 28 年 12 月~令和元年 7 月)で発表されている異物混入の事故を混入している物質の種類別にグラフにまとめました。

グラフでは多種多様なものが異物になっていることが伺えますが、それぞれの混入理由も様々となっています。混入理由を大きく分けると下記の主に3つに分類できます。

関連コラム:飲食店の異物混入を防ぐために
飲食店における問題のひとつとして異物混入が挙げられます。異物混入は食品の品質や安全性を低下させるだけでなく、お客様の信頼を失うことにもつながります。このコラムでは、実際の異物混入事例と共に、原因と対策をご紹介いたします。
(1)仕入れ食材の管理・取り扱い
飲食店で扱う食材の数は日々膨大な量であり、営業時間までに仕込みを終わらせなければならないという時間制約もあるため、管理は非常に大変です。しかしながらそうした背景の中で食品の管理が雑になってしまうと、簡単に異物混入事故は起こってしまいます。例えば納品時に使用される段ボールは劣化しやすく、流通段階で汚染することが考えられます。またビニールは食材を包装するためによく利用されますが、開封時に不備があると食材に近いため容易に異物として混入してしまいます。さらにこうしたビニール片は透明のことが多く、提供段階で気づきにくい側面もあります。
(2)調理機器・器具、厨房設備の管理・取り扱い
厨房機器や調理器具は日々様々な用途で食品に直接触れる形で使用されています。これらの機器、器具を発生源とした異物の事例も多くあります。これらの機器や器具は使用すればするほど不備が出てきて、いわゆる破損や劣化しやすい状態になります。形あるものいつか壊れるという言葉もありますが、気づいたころにはボロボロになっているなんてこともよくあります。しかし食品に直接触れている機器や器具に破損や劣化があるとそこから異物混入になりやすく、これらは硬質性のものが多いことから、怪我のリスクも高まります。
さらに使用後、汚れが付着した際に、しっかりと洗浄できていない場合には汚れが異物源になります。 さらに、直接食品に触れる調理器具類だけでなく、厨房設備の壁や天井の破損や汚れや一見食品と関係がなさそうな空調設備の埃汚れなどは蓄積し食品内に落下することで異物につながる可能性があります。
また食材残渣やヘドロ汚れがグリストラップ内や床に残っているとハエ類などの害虫の発生リスクが高まります。害虫の混入はお客様へより一層、不快感を与えますので注意が必要です。
(3)従業員の意識・行動
食材や調理器具以外にも従業員の身だしなみや行動が原因で異物混入につながることもあります。食事は人の手を介して提供まで行うため、絆創膏など身に着けているものが、忙しいときに気づかずに混入することもあります。身の回り品(私物)は衛生的に管理されていないため、異物混入のリスクは高くなります。
3.異物の対策
それでは調理の現場でこれらの異物混入の対策をするのかについてご説明いたします。
(1)仕入れ食材の混入対策
まず、納品の段階で対策をしていくことがよいでしょう。例えば段ボールや発泡スチロール、新聞紙など外装に使用される物はそもそも厨房内に持ち込まず、専用の容器や袋などに移して管理していただくと劣化からの異物混入対策となり、衛生的になります(やむを得ず持ち込む場合、棚や冷蔵庫の下段で保管いただくことで落下のリスクを減らせます)。
またビニールや袋の開封作業の際には、ハサミや一枚刃カッターを使用し、一度に滑らかに切ることで破片が混入するリスクを抑えることができます。仮に破片が出てしまったら、空調の風などでどこかに飛ばされてしまうこともあるため、すぐに破棄することが必要です。食材内に混入した恐れがある場合、ザルなどで濾すことでお客様へ提供する前に回収できます。 また仕込み後の食材は必ずフタやラップなどで覆いをして、何かが入らない形で保管するようにしましょう。
(2)調理機器・器具、厨房設備の混入対策
調理機器・器具は使用前に破損や劣化、汚れがないか確認することが望まれます。普段使いしている調理機器・器具は見慣れているためか、意識的に見ないと気付かないまま使用し、事故が起きることは非常に多いです。また破損や劣化に気づいたとしても、もったいない気持ちやこのくらいなら大丈夫だろうと言って使用を続けてしまうことがあるかもしれませんが、一旦は使用を中止し、包丁なら研ぎなおし、すぐ購入できるものなら買い替えることやあらかじめ予備を準備しておくことも検討してみてください。
汚れが残っている場合には、調理器具の隙間に入り込んでいることが考えられます。スポンジだけでなくブラシなど(金タワシ以外)を使用して細かな部分まで洗浄してみましょう。
また、厨房設備の破損や汚れは定期的にチェックして不備がないか確認することが望まれます。特に設備の破損は修復にお金も時間もかかりますので、早めに対応することをお勧めします。汚れが残る原因として、清掃頻度や箇所が明確に決まっていないことが考えられます。汚れやすく汚染のリスクが高い場所から清掃頻度をあらかじめ決めて、それを表などで見える化することで全従業員が把握できます。清掃した後も汚れがしっかり落ちているか目で見て都度確認してみるとより確実かもしれません。
(3)従業員の意識・行動の混入対策
飲食店である以上、全従業員が厨房は特別という意識をもって行動することが望まれます。特に身の回り品は厨房内に持ち込むことで異物のリスクになることがありますが、必要があるため、わざわざ持ち込んでいるものもあるかと思います。すべてを禁止にするとかえって働きにくい職場となるため、OKラインを決めることが望まれます。例えば手に傷や荒れがあり絆創膏をするのであれば、会社指定の絆創膏を利用することや絆創膏のうえから衛生手袋を必ず着用すること、私物の飲料であれば保管してよい場所を決めるなどできる限りリスクを減らしながら、現場を働きやすくできるようにルールを明確化してみましょう。
4.異物混入対策の通ずる考え方
今回取り上げた3つのパターンの異物混入対策の共通することはルールを明確にし、守る習慣をつけることです。仕入れ食材では納品時の入れ替えや開封時や仕込み後のオペレーション、調理機器・器具、厨房設備では使用前確認や洗浄、清掃後のチェック、従業員の意識・行動では調理以外でやむを得ず使用する物のルールを守ることなどはいずれもルールとして習慣づけていくことでリスクを軽減できます。
最初のうちはルールを明確化してそれを浸透させる必要があるため、ラミネートした紙を掲示することも1つの手段です。多店舗展開しているのであればルールブックを作ることも効果的です。めんどくさいと思うようなことばかりですが、事故を起こさないためには大切な考え方ですので、ぜひ現場でできる範囲から実践してみましょう。
5.実際に事故が起きてしまった場合
では実際に異物混入事故が起きてしまった場合、どのように対応するのが最善でしょうか。 お客様からお申し出を受けたら、まずはすぐに責任者に報告し、お客様に対して謝罪や返金、作り直しなど誠実なフォローを実施しましょう。異物そのものは破棄せず、原因を探るため保管しておき、店舗でもわからない場合は検査に出して、物質の種類から原因を特定しましょう。
原因が解明出来たらその対策案を講じ、お客様や全従業員に報告を行うことが望まれます。なぜ起きたのかを考えたとき、「忙しかった」「気づかなかった」などの漠然とした理由ではなく、「注文があわただしく、器具の扱いが雑になっていた」など具体的に追及することが重要です。具体的に示すことで、真の原因の把握につながります。
6.BFSでお手伝いできること
弊社では異物の同定検査を行っております。検査結果をお客さまへの説明や、自社での原因調査の際の一つのエビデンスとしてご活用ください。また弊社では年間40,000店舗を超える厨房衛生点検の実績もございます。今回はあくまでよくある事象を挙げましたが、それ以外でもリスクはあるかもしれません。数多くの店舗を見続けてきたコンサルタントだからこそ気づくことができる衛生リスクを幅広くアドバイスとしてお伝えすること、対策案を一緒に検討することが可能です。 ご興味のある方はぜひ一度、弊社HPお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。

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