
前編で、厨房における持ち込み禁止の対象品と理由を整理しましたが、「ルールを作っても守られない」「形骸化している」という悩みを持つ品質管理担当者も多いのではないでしょうか。ルールは作って終わりではなく、運用と教育によって初めて機能します。
後編では、持ち込み禁止ルールを現場で定着させるための具体的な運用方法と、異物混入を防ぐ総合的な衛生管理体制の構築ポイントを解説します。
1.持ち込み禁止ルールの運用と従業員教育
持ち込み禁止の理由と対象品についてお伝えしましたが、ルールが明確になっていても、店舗に係わる人すべてが知っている・守れる状態にならないと現実との乖離が起き、ルールが機能していない状態となってしまいます。そのような状態にならないためにも守れるルールを作成し、適切な従業員教育を実施していく必要がありますので、ここからそのルールと教育についてお伝えします。
(1)持ち込み禁止チェックリストと更衣室・ロッカー運用ルール
持ち込み禁止品は保管しておくエリアごと、つまり更衣室に置いておくものと調理エリアに持ち込まないものの2つのパターンでリストを作成するとわかりやすいかと思います。更衣室に置いておくものは持ち込み禁止品として紹介した装飾品やスマートフォンが該当します。これらは更衣室やロッカーに保管するよう周知しましょう。
また、ロッカーに置いておくものだけでなく、身に着けていないか身だしなみをチェックさせることも有効です。鏡を見ることで身だしなみを整えると同時にアクセサリーが付いていないか、ポケットの中に入れっぱなしのものがないか確認させましょう。確認する習慣を作り、うっかり持ち込んでしまう事態を避けられるようなルール作成がポイントとなります。
実際に私がHACCP計画の作成に携わらせていただいた企業では、「不要物の整理」として私物の飲料・菓子・薬といったものや、文房具類であるホチキス・鉛筆・輪ゴムなどの持ち込み禁止を明記しました。やむを得ず保管する場合は『食材や食器具を汚染しないよう所定の場所にまとめて保管』と記載しています。HACCP計画は安全な食を提供するためのルールですので、自社の店舗ルールを確認してみてください。
調理エリアの持ち込み禁止品についても専用のエリアを明確にし、リストを掲示してわかりやすく管理しましょう。また、代替品があるもの、例えばシャープペンシルや鉛筆は持ち込みNGでもノック式ボールペンはOKといったように、良い例と悪い例を併記するとわかりやすく持ち込み禁止品リストが作成可能です。
(2)定期的な持ち込み禁止品管理についての研修方法
持ち込み禁止品についてのルールは入社時に教育されると思いますが、定期的に「持ち込みがだめな理由」について研修を実施することで意識の定着が図れます。また、ルールを周知する際に事故事例の共有をすることで各個人が食品事故の原因を作ってしまうことを伝え、責任者が率先してルールを守る姿を見せていきましょう。勤務する人全員が当事者である意識を忘れないようにしてください。例外的に持ち込みを許可する際は、「何を」「何個」「どこへ」持ち込むのか事前申請制にし、持ち込み前後で個数や状態に変化がないのかの確認を徹底するようにしましょう。
2.異物混入事故を防ぐための総合的な衛生管理体制
最後に異物混入事故を防ぐための衛生管理体制の構築方法についてお伝えします。HACCPが義務化されてから約5年が経ち、HACCPという言葉を聞いたことがない、という人は減ってきたのではないかと思います。このHACCPの中で異物混入に関するルールがどのように組み込まれているか解説します。
(1)毛髪の混入を防ぐ着衣・身だしなみ基準
異物混入の視点でみると、人に付着している抜け落ちた毛髪や埃も異物源です。東京都保健医療局の食品安全アーカイブズによると、令和6年度の飲食店異物混入に関する苦情は全303件中、27件が人毛に関する苦情でした。
参照:『令和6年度 苦情処理状況』(東京都保健医療局)
人は1日に50~100本の毛髪が抜けると言われていますが、きちんとケアをすることで毛髪混入事故を減らすことができます。例えば、抜け落ちた毛髪や埃が厨房内に持ち込まれないようにするために、着替えた後粘着ローラーを使用してから調理作業に従事するルールになっている飲食店もあります。 身だしなみについてHACCP計画では、「従業員の健康管理等」の項目で着衣等の確認をすると記載例に書かれています。
参照:『HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書』(厚生労働省)
望ましい身だしなみの基準は業態によって異なるとは思いますが、指定の制服・帽子の着用、髪の毛は一つにまとめて前に落ちてこないようにすることがポイントです。また、稼働中の厨房内に立ち入る業者にも帽子と白衣の着用を働きかけましょう。

(2)品質管理担当者が実施すべき日常点検項目
店長やエリアマネージャーは店舗のHACCP計画に沿った日常点検を実施しましょう。特に以下の5点に注意してみてください。
1.従業員の衛生管理
アクセサリーを身に着けていないか、許可されていないスマートフォンの持ち込みはないか
2.食材の管理
未洗浄の野菜が冷蔵庫の上段に保管されていないか、床面やゴミ箱上など汚染リスクの高い場所に食材が放置されていないか
3.調理工程の管理
使用している器具類に破損はないか、スライサーや缶切りなどに固着汚れはないか
4.施設・設備の汚れ・破損はないか
冷蔵・冷凍庫・食器洗浄機といった什器に固着汚れや破損はないか、天井・壁・床に破損や固着汚れはないか、調理場は明るく異物を見つけやすい環境か
5.記録の運用
HACCP計画に沿った記録は適切に記入されているか、計画逸脱時に適切な対応が取られているか
衛生点検を受けられているなら、点検員に指摘されたところが適切に改善されているか確認することも重要です。他店舗の状況も確認し、自分事と思って確認・改善を実施しましょう。
3.まとめ:飲食店の持ち込み禁止ルールで食の安全を守る
持ち込み禁止ルールを適切に運用することで、異物混入事故や食中毒事故を防ぎましょう。食事中に不快な思いをしたい人はいないはずです。従業員・業者・お客様それぞれの立場によるルール遵守で、一つでも多くの食品事故が起きないようにしましょう。ルールを運用するうえで、店舗の実態に合わないことが出てくるかもしれません。これは、よりレベルアップした衛生管理を実施するチャンスです。従業員からも適切に意見を聞き、よりよい持ち込み禁止ルールを作成・運用しましょう。
BMLフード・サイエンスでは、異物混入が起きにくい調理現場の構築や、マニュアル作成の支援など、食品衛生管理体制の構築を幅広く支援しています。現状の体制に不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。詳しくは下記ページをご覧ください。


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こちらのコラムは コンサルティング本部 東京Eグループ 大野 智子 が担当いたしました。
コンサルティング本部では飲食サービス、給食、ホテル、冠婚葬祭などの事業を営むお客さまに対し厨房の衛生点検や、品質管理システムの構築支援、従業員教育などのサービスをご提供しています。 年間40,000店舗以上の点検実績をもとにした衛生コンサルティングサービスにより、お客さまと共に消費者の安心と安全に貢献しています。





