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【後編】水害時の飲食店が営業再開前に読むべき衛生管理 ~再開判断編~

【後編】水害時の飲食店が営業再開前に読むべき衛生管理 ~再開判断編~

 近年、台風や線状降水帯による大雨の激甚化に伴い、店舗が浸水被害を受けるケースが全国で相次いでいます。浸水した水は一見きれいに見えても、土砂や下水、排水などが混ざった「汚水」であり、食中毒や感染症の原因となる細菌・ウイルス・寄生虫に加え、油や薬品などの化学物質が含まれていることもあります。水が引いたからといって、そのまま営業を再開すると、食中毒事故や設備トラブルを引き起こすおそれがあります。

 本記事では、前編で解説した浸水リスク・食品の廃棄・施設や設備の清掃消毒を踏まえ、後編では①水道・電気・ガスの復旧、②従業員の衛生管理、③営業再開の判断と再発防止を解説します。浸水直後の廃棄・清掃消毒については前編を参照してください。

前編を読む

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1.水道・電気・ガスの復旧と確認

(1)水道

  •  水道水は、自治体から「飲用可」の情報を確認してから使用する
  •  断水解消後は、濁りが消え、水温が一定になるまで十分に水を流してから使用する。濁りや赤水、異臭・異味がある場合は、水道事業者に確認する
  •  受水槽・高置水槽(貯水槽)を使用している施設では、浸水した場合は槽内を清掃・消毒し、水質検査で安全性を確認してから飲用・調理に使用する
  •  井戸水を使用している場合は、濁りの有無や殺菌装置(塩素注入機など)の作動状況を確認し、水質検査で安全性が確認できるまで飲用・調理に使用しない

(2)電気

  •  停電中は電気設備のスイッチを切り、プラグを抜いておく(復電時の「通電火災」防止)
  •  浸水した電気設備・配線・コンセントは、乾いたように見えても使用しない。ブレーカーは切ったまま、電気工事店に点検(絶縁測定など)を依頼し、安全が確認できてから通電する
  •  水没した調理機器・冷蔵庫・食器洗浄機などの電化製品は、乾燥後に一見正常に動いても、内部に汚れや塩分が残っていると漏電や火災の原因になります。メーカーや専門の会社に点検・修理を依頼しましょう
  •  冷蔵・冷凍・加温設備は、食品を入れる前に、必要な温度を安定的に保てることを確認する

(3)ガス

  •  ガスの臭いがする場合は、火をつけたり換気扇や電気のスイッチに触れたりせず、ガス栓とメーターの元栓を閉め、窓を開けて換気し、すぐにガス会社に連絡する
  •  水没したガス機器・ガス給湯器は、そのまま使用せず、ガス会社または専門業者に点検を依頼する
  •  ガス供給が停止していた地域は、ガス会社の案内に従い、供給再開を確認してから使用する

2.従業員の衛生管理~作業中の感染症・けが対策

(1)保護具の着用と手洗い

清掃・消毒作業中は、長袖・長ズボン・ゴム手袋・長靴・マスク・ゴーグルを着用し、皮膚の露出を減らします。作業後はもちろん、調理前、食事前、トイレの後は、手洗い洗剤と流水で丁寧に手を洗います。汚水や泥に触れた手指を介して、食品や器具を汚染しないようにしましょう。

(2)けが・破傷風の予防

泥や汚水の中には、破傷風菌などの病原菌が含まれていることがあります。釘の踏み抜きなどで傷口から菌が入ると、口を開けにくい、首筋が張るなどの症状が出る破傷風を発症するおそれがあります(潜伏期間は3日〜3週間)。安全靴や踏み抜き防止インソールを着用し、少しでもけがをしたら、傷口をきれいに洗って速やかに医療機関で処置を受けましょう。破傷風ワクチンの追加接種(最後の接種から10年以上経過している場合 )も検討してください。

(3)体調管理

復旧作業は高温多湿の環境で行うことが多く、熱中症にも注意が必要です。こまめに休憩を取り、水分・塩分を補給しながら、2人以上で作業しましょう。また、汚泥の乾燥に伴う粉じんやカビを吸い込むと、呼吸器症状を起こすことがあるため、マスクやゴーグルを正しく着用します。作業後に発熱・咳などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

(4)再開後の衛生ルール

ノロウイルスはアルコール消毒が効きにくい一方、次亜塩素酸ナトリウムや加熱に弱い特徴があります。調理器具等は洗浄後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように拭く、まな板・包丁・食器・ふきん等は熱湯(85℃以上)で1分間以上加熱する消毒が有効です。おう吐物等の廃棄物は、1,000ppmの塩素液に浸して処理します 。また、嘔吐・下痢などの症状がある従業員は、症状が治まってからノロウイルス検査で陰性が確認できるまで勤務させないなど、通常時と同様の衛生管理ルールを徹底します。


3.営業再開の判断

 ここまでで店舗営業再開に向けた準備を見てきましたが、ここからは実際に営業再開を判断する際の判断基準や、日ごろからの備えについてみていきましょう。

(1)再開前の自主点検

営業再開前には、以下の項目を確認しましょう。

  •  施設の清掃・消毒が完了し、十分に乾燥しているか
  •  水害の影響を受けた食品・衛生用品の廃棄が完了しているか
  •  水道水の飲用可否が確認できているか(井戸水・貯水槽は水質検査済みか)
  •  電気設備・ガス設備の点検が完了しているか
  •  冷蔵・冷凍・加温設備が適正温度を保てるか
  •  調理器具・食器の洗浄消毒が完了しているか
  •  保健所への相談・報告が済んでいるか

(2)水害後の害虫・害獣・カビ対策

浸水後は、ハエ・ゴキブリ・ネズミなどの衛生害虫、害獣が発生しやすくなります。害虫の死骸や糞は食品を汚染するだけでなく、異物混入のクレームにもつながります。清掃・消毒後、侵入口となるような隙間はふさぎ、定期的に見回りを行いましょう。また、湿気が残っているとカビが繁殖します。完全に乾燥させるまで営業を再開しないことも重要です。

(3)日頃からの備え(BCP)

水害は「起きてから」では対応が遅れます。日頃から、以下の備えをしておくことをおすすめします。

  •  浸水リスクの把握(ハザードマップの確認)
  •  重要書類・データのバックアップと避難場所の確保
  •  停電・断水時の連絡体制の整備
  •  緊急時の食品廃棄・設備点検の手順書(BCP)の作成
  •  衛生管理マニュアル(HACCPに基づく計画)の見直し


まとめ

 水害からの復旧は、「安全確認 → 食品の廃棄 → 清掃・乾燥 → 消毒 → 復旧準備 → 再開判断」の順で進めるのが基本です。この順序を入れ替えたり、途中を飛ばしたりすると、思わぬ事故や二次被害につながります。実際に被災した際、営業を再開してよいかどうかは、施設の被害状況によって確認すべき点が変わります。自己判断のみで再開せず、保健所の確認を得てから営業を再開するようにしましょう。

水が引いて一安心したときこそ、食中毒リスクは最も高まります。「お客様と従業員の安全」を最優先に、焦らず、確実な復旧を進めてください。



 BMLフード・サイエンスでは、飲食店・食品事業者の皆さまに向けて、衛生管理の仕組みづくりを支援するコンサルティング、環境検査(拭き取り検査・落下菌検査)、水質検査、従業員の検便検査などのサービスを提供しています。水害からの復旧・再開に関するご相談や、再開後の衛生状態の確認(環境検査)も承っております。お気軽にお問い合わせください。

詳しくは、「コンサルティングサービス」、「検査サービス」のページをご覧ください。



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参考コラム・文献

 

こちらのコラムは コンサルティング本部 東京Bグループ 平田 朋徳が担当いたしました。

コンサルティング本部では飲食サービス、給食、ホテル、冠婚葬祭などの事業を営むお客さまに対し厨房の衛生点検や、品質管理システムの構築支援、従業員教育などのサービスをご提供しています。 年間40,000店舗以上の点検実績をもとにした衛生コンサルティングサービスにより、お客さまと共に消費者の安心と安全に貢献しています。

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