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カンピロバクター食中毒とは?~予防対策・抑えるべき3つのポイント~

カンピロバクター食中毒とは?~予防対策・抑えるべき3つのポイント~

たびたび世間を騒がせるニュースのひとつに食中毒による集団感染があります。食中毒の原因となる菌やウイルスには様々な種類が存在しますが、その中のカンピロバクターという菌はご存じでしょうか?実はカンピロバクターは、日本において細菌による食中毒の中で最も発生件数が多い食中毒菌 (年間300件、患者数2,000人程度)となっており、特に注意すべき食中毒菌の一つとされています。


今回はカンピロバクターの特徴とその対策方法についてご紹介します。

1.カンピロバクターの特徴


カンピロバクターは菌の発育条件が限られていることが特徴であり、30~45℃の高い温度と酸素濃度3~15%の微好気的条件下(大気中の酸素濃度は約21%)でしか発育しません。大気中や嫌気条件下では死滅しやすく乾燥と加熱に弱いですが、一方で感染に要するとされる菌量がわずか100個程度と少ないため、汚染された食品を介して食中毒が発生していると考えられます。

(1)カンピロバクター・ジェジュニ/コリ とは

カンピロバクター属は、26 菌種 10 亜種に分類されていますが、人が感染するカンピロバクター感染症の多くを占めるのがカンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリの2種類です。

トリ・ウシではカンピロバクター・ジェジュニの保菌率が高く、ブタではカンピロバクター・コリの保菌率が高くなっており、これらは生化学的性状試験やPCR法によって分けることが可能ですが、発育条件や感染した際の症状などは変わらないため一般的にカンピロバクター感染症はジェジュニとコリの2つ合わせたものを指しています。

(2)カンピロバクターの汚染経路は


大気中では生きられないカンピロバクターは、ニワトリ、ウシ等の家禽や家畜、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物の腸管内に生息しています。特にニワトリは保有率が高く、市販されている鶏肉の60%以上が汚染されていることから、鶏肉の生食や加熱が不十分なものを食することが感染の主な原因と考えられています。


家禽の体内からカンピロバクターを除去することは難しいため、鶏肉の生食を避けしっかりと加熱することが大切です。

(3)カンピロバクターの主な媒介食品


カンピロバクターは特に家禽の保有率が高いため、鶏肉を使用した食品(ササミ、鶏レバー、鶏肉のタタキ、鶏わさなど)からの感染が多く認められます。牛の肝臓の汚染も確認されておりますが、平成24年7月1日より牛の肝臓を生で食べることが禁じられてからは牛の肝臓による食中毒の発生件数がほぼ無くなりました。また件数は少ないですが、殺菌の不十分な井戸水や湧き水からの感染も発生していますので、こちらも注意が必要です。

(4)カンピロバクターの人への影響


人がカンピロバクターに感染すると下痢(水様便から血便まで様々)、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、悪寒、倦怠感などの症状が見られ、これらは他の食中毒菌による症状と類似しています。


しかし潜伏期間が1~7日と比較的長く、治癒した数週間後にギランバレー症候群という自己免疫性末梢神経疾患(手指や四肢の痺れ、震えなど)を発症することがあるため、菌を体内に保有していても無症状である期間が長かったり、逆に体から排出された後でも後遺症に悩まされたりする場合があることがカンピロバクターの懸念点として挙げられます。

2.カンピロバクターの予防対策 抑えるべきポイント




厚生労働省のデータ(2018年~2022年)よりカンピロバクターの発生場所の約8割が飲食店であることがわかりました。そのため、鶏肉を使用した料理を提供している飲食店の方がカンピロバクターについての知識を深めることで食中毒予防に繋がります。


データ元:厚生労働省 4.食中毒統計資料 より2018年~2022年のデータをもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html


具体的な予防対策として、ポイントが3つあります。

  1. しっかりと食材に火を通すこと(カンピロバクターは熱に弱いため、中心温度75℃ 1分以上の加熱で死滅します)。
  2. 肉と別の食材で使用する調理器具を分けること。
  3. 肉を取り扱った後は手指と調理器具を洗うこと。

また個人や家庭で出来る予防対策としては、上記3つに加えて加熱不十分と思われる鶏肉を食べないことが挙げられます。


(1)カンピロバクターの二次汚染を防ぐには

上記で述べたようにカンピロバクターは熱や乾燥に弱いため、正しい食品の取り扱いをすることで食中毒の発生をゼロに近づけることが可能です。それでも毎年の発生件数が減らない原因の1つに、汚染された食品からの二次汚染が考えられます。

二次感染は飲食店だけではなく一般家庭でも身近に起きうるものが多く、肉を扱ったまな板や包丁のまま別の食材を扱ってしまった、肉を扱った後によく手を洗わなかった、焼き肉等の際に生肉を扱った箸で焼けた肉を取り分けてしまった等、家庭でも容易に発生します。そのため生肉を扱う際には十分に注意していただき、生肉を扱った後は調理器具を変えるか洗浄をし、手指の洗浄もしっかり行うことが大切です。

(2)カンピロバクターの温度管理

カンピロバクターの発育温度は30~45℃ですが、その中でも42℃でよく増殖することがわかっています。哺乳類の体温は37℃前後ですが、鳥類は42℃と哺乳類よりも体温が高く、よりカンピロバクターが発育・増殖しやすい環境と言えるでしょう。

カンピロバクターは熱を加えることで容易に死滅することが確認されている一方で、4℃や-20℃などの低温でも生存が確認されたというデータがあります。やはりカンピロバクターによる食中毒を防ぐには、しっかりと加熱をすることが大切なのです。

(3)飲料水源も関係ある?

鶏肉などの食品からの感染以外に飲料からの感染経路も存在します。動物の体内や土壌、ハエ・ダニ等の衛生害虫等、カンピロバクターは自然界に広く生息しているため、飲み水の汚染も念頭に置かなければなりません。

大気中や乾燥には弱いカンピロバクターですが、水の中では数週間生存できることがわかっています。冷水(4℃)で数週間、温水(25℃)で数日生存するため、汚染が疑われる湧き水や井戸水などは必ず煮沸消毒を行いましょう。

(4)衛生管理の基本:食品への汚染防止

現在、農場の環境によってカンピロバクターに汚染されている動物と全く汚染されていない動物の群が検出されており、畜産農場や食肉処理場における生体及び食肉への汚染の低減に有効な衛生管理方法が調査されています。

しかしながら鶏は感染しても症状を示さず、農場は陰性鶏群を生産しても経済的メリットがないことや迅速かつ簡易な検査法がなく区分処理が困難であることから、現段階では生産段階、食鳥処理段階での効果的なリスク管理措置が講じられておりません。このため、現段階では汚染を完全に排除するのは困難であり、鶏肉等は生食または加熱不十分で食すべきではないとされています。

3.厨房での食品の扱い方

食中毒を発生させないためには食中毒予防の三原則「つけない」「ふやさない」「やっつける」という3つの側面からの対策が一般的です。

  1. 「つけない」: 手指に菌をつけない、よく手を洗う、使い捨ての手袋を使用する、生肉と別の食材を同じ調理器具で扱わない等。
  2. 「ふやさない」: 細菌が発育・増殖しやすい温度(20~45℃)を避け、保管の際は別の温度帯で行う。
  3. 「やっつける」: 中心温度75℃で1分間の加熱を行う。

カンピロバクターの場合、前述のように100個程度の菌量で発症することから、特に「つけない」と「やっつける」が重要となります。それぞれの対策についてはこちらのコラムもご参考ください。

食品衛生の目的

関連コラム:食堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識~チェックすべき5つのポイント~

食堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識をご紹介します。


4.厨房の衛生管理とは


厨房での衛生管理は食中毒予防の三原則など、従業員が意識する衛生管理の他に施設自体の衛生管理を行うことでより高いレベルの食中毒予防対策が可能となります。そのためには定期的な環境衛生の検査及び扱う食材の衛生検査、そして厨房の衛生点検等が大変効果的です。

BMLフード・サイエンスは、食品の微生物・理化学検査をはじめ、商品の品質検査、飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組みづくり、食品安全認証の取得支援まで、ワンストップでサービスを提供できる総合コンサルティング企業です。 長年培ってきた高度な検査技術とノウハウをもとに、質の高い各種検査とコンサルティング事業体制を構築しており、全国を網羅したネットワークにより、スピーディなサービスを提供します。


詳しくは、「コンサルティングサービス」のページをご覧ください。

(参考HP)
 厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html


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